安保反対デモは「12万人」……なぜ警察発表の「4倍」なのかスピン経済の歩き方(3/4 ページ)

» 2015年09月01日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ギャップ」が生まれる原因

 ただ、実はもうひとつこのような「ギャップ」が生まれるケースがある。それは、共産党系市民団体、あるいは労働運動をしてらっしゃる方たちの「動員目標と実力の乖離(かいり)」が大きくなってしまった時だ。

 今回の安保反対デモでも、共産党や労働組合、そこと連なる市民団体が大きな役割を果たしているのは今さら説明する必要はないだろう。このような方たちの集会やデモにはだいたい、「動員目標」というのがある。どこどこ労組から何人、どこどこ団体からは何人というノルマがあり、それに達するように参加者を動員しなくてはいけない。

 昔は、目標と実数の開きはそんなになかった。むしろ、目標を大きく上回る「うれしい誤算」もあったが、労働運動の衰退によって徐々に目標と実数のギャップが生まれてくる。それが顕著になったのは、1989年のメーデーだ。実はこの年、労働運動は音楽バンドみたいに方向性の違いから、連合・総評系、共産党・統一労組懇系、東京都労連という3つに分裂をしてメーデーを行った。もちろん、それぞれ「動員目標」を掲げてがんばったが、組織は3分割したので、動員力も3分割されるのは小学生でも分かる。だが、そのジリ貧具合を認めてしまうと、組織力低下があらわになる。そこで苦肉の策として生み出されたのが、「水増し」だ。

 この年、連合・総評系メーデーの参加者は19万6000人、共産党・統一労組懇系は23万人、東京都労組連合会が3万1000人となったが、これらはすべて「主催者発表」。警視庁が「実態に近い」と自信満々に発表した結果では、連合・総評系が5万5000人(3.6倍)、共産党・統一労組懇系が3万7000人(6.2倍)、都労連が1万7000人(1.8倍)。これが事実ならかなりダイナミックな水増しが行われたことになる。共産党・統一労組懇系が尋常ではない「鬼盛り」をしている理由は、『読売新聞』(1989年5月2日)によると、『統一労組懇系は「とにかく連合・総評系を上回る人数」を強調していた』からだという。

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