自動車世界の中心であるCセグメント、しかし浮沈は激しい池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

» 2015年09月07日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

フォード・フォーカスの下克上

 折悪しくここに伏兵が急襲する。アジアにばかり注意を払っていたフォルクスワーゲンの足をすくった意外な敵は欧州フォードだった。当時の欧州フォードは「お年寄りが好む安くて地味なクルマ」というイメージに悩まされていた。フォードはイメージの一新を図り、伝統ある車名「エスコート」を廃止。後継として「フォーカス」をデビューさせる。フォーカスは、地味なフォードのイメージを払拭すべく「ニューエッジ・デザイン」という新たなデザインの方向性を打ち出し、従来にない斬新なデザインに仕立てた。さらに広々とした室内空間を実現するとともに、フォーカスをクラストップのハンドリングカーに仕上げたのである。それら全てを束ねて一台のクルマにまとめ上げていく指揮者の役割を果たした、時の副社長リチャード・パリージョーンズの手腕は見事なものだった。

フォードの起死回生の一台、フォーカスは、ゴルフを王座から追い落とした(写真はWikipediaより) フォードの起死回生の一台、フォーカスは、ゴルフを王座から追い落とした(写真はWikipediaより)

 四代目ゴルフは、日本でこそ高評価で迎えられたが、地元欧州では批判の嵐に見舞われた。そしてCセグメントの王者であったはずのゴルフは、ついに販売台数でフォーカスにその座を明け渡すことになったのである。その後、猛烈に反省したフォルクスワーゲンは、執念を込めた五代目で王座を奪還し、六代目でそれをさらに加速させた。フォーカスに出し抜かれたことをきっかけにフォルクスワーゲンは黄金期を迎えるのである。「禍福は糾える縄の如し」という通り、成功は慢心を呼び、失敗は反省を呼ぶ。

 現行の七代目は四代目の意趣返しからか、再び背の低いパッケージにチャレンジしている。四代目のような失敗作ではどうもなさそうだが、それでもど真ん中直球のゴルフではない。その流れがどこへ向かうのかは八代目が登場したときにはっきりするはずだ。

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