村木: そうなんですよ。企業は消費者としての「LGBT市場」に注目しがちなのですが、むしろ従業員のLGBT対応をしないことによる「損失」のほうに目を向けてほしいと思います。なにもしないことで、損失が増えているかもしれません。例えば、LGBTの中のいい人材を採用できないでいるかもしれません、当事者が孤立してうつ病で会社を休んでいるかもしれません、モチベーションが下がって転職しているかもしれません。見えにくいですが、大きな「損失」です。
実際に、転職を経験しているLGBTは多いと思います。例えば、ある日本企業と外資系企業が合併しました。外資系には社内にLGBTのグループがあったのですが、日本企業にはありませんでした。日本企業はLGBTへの配慮がなにもなかったので、外資系で働いていたLGBTの社員がこぞって辞めてしまいました。この時点になって初めてその日本企業は気づいたんですよ。「このままではイカン」と。
土肥: 組織として対応すべきことは、たくさんありますよね。例えば、相談窓口とか、研修を行うとか、福利厚生を見直すとか。そういうことは会社のエライ人たちに考えていただくとして、自分の席の近くで“問題”が起きていることを知ったら、どのように対応すればいいのでしょうか。
村木: 職場で差別的言動をゼロにすることは難しいですが、誰かがマズいことを言ったら「そらアカンで」と周囲の人たちが即座に指摘してくれたら、当事者も働きやすくなるはず。まずは、そうした社内の雰囲気づくりを目指すべきでしょう。
例えば「自分は、女性になりたいと思っているんだ」と言われたら、どうしたらいいのか。当事者は自分の気持ちを知ってほしいケースが多いので、まず「そうなんだ」と受け止めることが大切。身近な人から「カミングアウトされたどうしよう?」と不安を感じている人がいると思いますが、まずは受け止める。そして、他人にはそのことを絶対にバラさない。これでひとまずは十分なんですよ。
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