村木: さすがにそうした治療は「非人道的だ」ということで、世界保健機構(WHO)は1990年に「同性愛はいかなる意味でも治療の対象とはならない」と決めたんですよね。日本でも1994年に当時の厚生省がこの基準を採用しました。
土肥: 1994年って、村山内閣が発足した年ですね。それほど昔の話じゃない。
村木: 20世紀もさまざまなことが起きていました。例えば、ナチス・ドイツは、同性愛者を強制収容所に送っていて、数万〜数十万人を虐殺しました。英国では、同性愛者は公立学校の先生になれない法律がありました。米国では、軍隊で同性愛者だと知られたら除隊になる慣例がありました。
土肥: いずれもいまでは廃止されていますよね。
村木: はい。でも今でもLGBTを迫害する国や地域があります。例えば、ロシアではLGBTであること自体は罪にはなりませんが、LGBTについて人前でポジティブな発言をすれば罪になるんですよ。
迫害されているのは、ロシアのLGBTだけではありません。インド、シンガポール、マレーシアなど、78カ国と4地域ではLGBTというだけで「禁固刑」になります。サウジアラビア、イランなど、5カ国とナイジェリアおよびソマリアの一部では「死刑」です(2014年5月現在)。
土肥: 発言するだけで罪になったり、LGBTというだけで禁固刑になったり、死刑になったり……。ちなみに、日本では?
村木: 日本では、LGBTだからといって犯罪になることはありません。ただ、欧州などでは差別禁止法の整備が進んでいますが、日本にはありません。職場や学校で、イジメやからかいの対象になっていたり、公平でない扱いをされていますが、それを取り締まる法律がないのです。
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