きれいなトイレで女性が輝く? 迷走する女性活躍政策(3/3 ページ)

» 2015年09月24日 06時00分 公開
[日野照子INSIGHT NOW!]
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呪いのようなジェンダーコンプレックスを政策で取り上げるという勘違い

 トイレをきれいにすると女性が輝くというのは、2012年に大ヒットした「トイレの神様」に出てくるおばあちゃんの発想と同じです。トイレ掃除をすれば美人になれるよという「おまじない」。そういえば、友人の母親は妊娠中にトイレ掃除をすると丈夫な子どもが生まれるという姑の言葉を信じて、大きなおなかを抱えて、毎日必死でトイレ掃除をしていたそうです。

 冷静に考えれば、自分がやりたくないトイレ掃除を、若い娘や身重の嫁にさせるための「おばあちゃんの知恵」だとしか思えませんが、世の中には、これを「いい話」と絶賛する人々が多数存在しています。このような「表向きはいい顔をした呪い」を平気でかける女性たちのどろどろとした世界が、連綿と受け継がれていることこそが、根深い社会問題ではないでしょうか。

 そして、そのまるで呪いのように植え付けられてきたジェンダーコンプレックスを、政策の一環で堂々と取り上げてしまうという勘違いぶり。

 「すべての女性が輝く社会づくり」政策を、多くの女性が冷ややかな視線で見てしまう原因のひとつは、この旧来の価値観を捨てきれないまま「表向きはいい顔をした」おばあちゃん的な偽善を感じ取るからではないでしょうか。

 「日本トイレ大賞」創設時の有村女性活躍担当大臣の答弁にこんな言葉がありました。

 「政治、行政で力がある、意思決定ができる方々は圧倒的に男性が多いという現状において、その方々が、地方で、当然ながら女性のトイレに行ったことがないということで、こんなに地方格差があるんだ、こんなに施設間格差があるんだ、しかも男女差がこんなにあるんだということを私自身、痛烈に感じてきたこともありました」

 なぜ、その痛烈に感じたという「格差」の本当の意味をもっと深くとらえ、トイレとは違う方向に持っていけなかったのか。とても残念です。

 「日本トイレ大賞」は、「すべての女性が輝く社会づくり」の一環でなく、女性のための予算が使われたのでなければ、全面的に応援したい企画でした。きれいで便利なトイレも、災害時の画期的なトイレも、国際支援も、どれもとても大切だし、表彰された方々にはこれからもぜひがんばってほしいと思います。

 そういう意味で二重に残念だった「日本トイレ大賞」。できれば、来年以降は、「すべての女性が輝く社会づくり」とは別の政策の中で、続けてほしいと思います。(日野照子)

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