「格差社会は金持ちこそが滅びる」は本当かスピン経済の歩き方(1/4 ページ)

» 2015年09月29日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。


 先日、面白いタイトルだなあと思って、『格差社会で金持ちこそが滅びる』(講談社α新書)という本を読ませていただいた。著者は、セブン&アイ・ホールディングスの社外監査役も務めるマーケティング評論家・ルディー和子さんである。

 ちょっと前に話題になったピケティさんは、格差社会で貧しい人はより貧しくなって、金持ちはより金持ちになると説いた。より富が集中するのになぜ滅びるのか。興味津々で読み進めていくと、なるほどなあと納得する箇所があった。

 富の格差が広がると、貧乏人だけではなく、富裕層の寿命が短くなるという調査結果があります。(本文P145)

格差社会で金持ちこそが滅びる』(著・ルディー和子、講談社+α新書)

 ルディーさんによると、日米欧の研究者たちの調査で、社会の所得格差が開けば開くほど、低所得者層だけではなく、中間層や富裕層も死亡するリスクが高まるという結果が出ているそうで、貧しい人たちの妬みや憎悪が、富裕層にとっても大きな慢性的ストレスになり、自律神経やホルモンの動きを乱して、免疫機能や血糖値に悪影響を及ぼしている可能性があるというのだ。

 これにはちょっと驚いた。

 お金持ちは貧しい人よりも長生きしているイメージが強かったからだ。2014年4月にも米ウォールストリートジャーナルなどでは『お金持ちほど長生き』という記事を配信、米国人を対象とした調査で、平均寿命が所得に比例したなんて結果も紹介していた。

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