「格差社会は金持ちこそが滅びる」は本当かスピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2015年09月29日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ストレス理論」に納得

 こちらは肌感覚としてもなんとなく理解できる人も多いだろう。低所得者になればなるほど、がむしゃらに働かなくてはいけない。しかも、食事は「安さ」が重要で、「健康」に気をつかう余裕がないというのは容易に想像できる。さらに米国のような国民皆保険制度がない国では、高度医療を受けるためには多額の費用がかかる。国の社会保障制度による違いはあるが、「命の時間」をカネが決めるという側面は現代社会に確かに存在しているのだ。

 ところが、実際はお金持ち側も貧乏人から憎悪や嫉妬によるストレスで死へ追いやられるということになってくると、この見方もずいぶん変わってくる。極論をすれば、格差が広がった社会というのは、貧乏人も金持ちも種類は違えど、ストレスによって命を削り取られ、等しく憤死していく社会とも言えるのだ。

 なんともやりきれない思いになるが、個人的にはこの「ストレス理論」は非常に納得である。

 収入、職業、教育水準、住環境などを考慮した「社会経済的地位」(SES:socioeconomic status)と呼ばれるものがあり、この階層が下がるほど、健康状態が悪化されるという因果関係があることは以前から言われていたのだが、実は食生活や医療などとは別にある大きな要素が関わっていることが分かっている。

 それは「貧しいと感じる心」だ。

 カリフォルニオ大学サンフランシスコ校の研究者は、被験者にはしごの絵を見せて自分の社会的ポジションはどこかを選ばせ、健康状態を質問したところ、「悪い」と答えた人の多くははしごの下を選んだ。逆に、はしごの上のほうを選んだ人は自分を健康だと感じている人が多かったという。要するに「貧しいと感じる心」が「ストレス」となり、病をひきおこしている可能性があるのだ。

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