このような理論を国同士の比較で説明する人もいる。例えば、ギリシャ人は平均で米国人の収入の半分しかないのに、米国人よりも平均寿命が長い。つまり、「客観的な貧しさ」が人の寿命を短くしているのではなく「格差を感じて、他者を妬む心」こそが人の命を削っているのではないかというのだ。
本当のところは科学の世界の話なのでよく分からないが、ルディーさんのように社会を「妬み」という視点で見ることは、ビジネスの現場で大いに役立つ。例えば、組織づくりなどその典型だろう。
今さら年功序列、終身雇用も難しい。社員同士の競争を促進させている企業も多いが、そこで重要なのは「格差をつくらない」ことではなく、「格差を感じさせない」ことだ。競争原理のなかで、妬みやそねみが生まれるのはごく自然のことだが、そこからどうやって公平さをつくるのかが課題であり、ルディーさんが本書のなかで紹介している「資生堂」では、「自分だけ損をしている」と思わせない環境をつくっているという。
そんなことを考えていたら、ちょっと不安な企業があった。米国のマクドナルドだ。少し前のニュースなのでご覧になった方も多いと思うが、マクドナルド従業員の平均賃金を1とすると、同社の最高経営責任者(CEO)の報酬は644に相当するという。
米証券取引委員会(SEC)によって、マクドナルドのような株式公開企業は2017年から、一般社員の平均的給与とCEOの報酬の比率を毎年開示することを義務付けられるということで、その前にブルームバーグがためしに調べてみたんだとか(参照リンク)。
外資系企業の経営者たちの報酬がすさまじいのは米国人なら誰もが知る常識だが、平社員と比較して「可視化」したという話はあまり聞かない。
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