私立高校と公立高校の5.8倍の格差(3/4 ページ)

» 2015年10月05日 07時41分 公開
[中土井鉄信INSIGHT NOW!]
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あきらめがまん延していた職員室からの学園改革

 では、私立高校はどのような方向性で、経済的負担の格差を乗り越える魅力を身につければよいのでしょうか。

 1つは、出口にかかわること。そして、もう1つは、その出口を保証するプロセスだと私は思います。出口とは、いわゆる卒業した後の進路実績です。一方の出口を保証するプロセスとは、高校3年間の学習面・進路指導面でのプログラムです。

 私立高校は、より魅力的な学校となるために、現有勢力の分析を行います。教師の顕在能力、教師の潜在能力、教育課程の時代性のチェック、進路指導体制のチェック、生徒の未来像が具体的かどうかのチェックなどなど。また、現在の学習面・進路指導面でのプログラムがこの時代に合っているかどうかを検討します。

 私がコンサルティングを実施した私立高校では、上記のような分析を行い、さまざまな点で問題があったことを認めたうえで、その中で学園改革の優先順位のトップに据えたのは「生徒の未来像」でした。

 生徒が高校を卒業して12年後、生徒が30歳の大人になった時にどういう職業につき、どういう家庭を作りたいのか、高校3年間でさまざまなシミュレーションを生徒たちに行わせるプログラムを作りました。この「生徒の未来像」を探求させるプログラムが、勉強へのモチベーションを高め、進路実績ばかりでなく、生徒の授業への参加意識が高めていったのです。

 私がコンサルティングを実施した私立高校(中退率が高い、いわゆる地域の底辺高校でした)に初めて足を踏み入れたときの印象は忘れられません。男子生徒の多くはズボンを腰で履き、これがずり下がっていて、下のパンツが見えていました。目の青い生徒が多かったので、ここは外国かと思ったら、カラーコンタクトをしている生徒が多かっただけでした。また、やんちゃな高校生だけでなく、無気力を絵に描いたような生徒がいました。

 そして何より、職員室にはあきらめがまん延していました。「生徒の未来像」をかたちづくるプログラムをテコにして、学園改革を進める中で、この職員室の意識改革が同時進行的に課題として浮き彫りになっていったのです。

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