また、お客さんからよく尋ねられる商品というのは、大体決まっている。店舗にもよるが、コンビニの陳列棚は、およそ6段から8段。当然、下のほうは目に付きにくく探しにくい。距離があっても聞きづらくても、よく聞かれるモノには脳内補完が働き、聞き取れるのだ。正確に言うと「聞き取れたように感じる」のかもしれないが、人間の脳はスゴいなあと改めて感じる。
しかし、この脳内補完は、記憶や経験量に大きく左右される。ベテランのアルバイトは経験が豊富なので困ることは少ないが、新人はできないことが多い。
筆者の経験則で言うと、残念なことに、多くのアルバイトは1年以内で辞めていく。通常のオペレーション業務なら1年もたてば十分だが、お客さんとのコミュニケーションにおいては「ベテラン」と呼ぶには早過ぎる。脳内補完が働くようになるには、それ以上の経験が必要なのだ。
アルバイトの募集で「未経験者歓迎」の文字が躍るコンビニだが、心地良い接客に至るまでには、実は多くの経験が必要となる、いわば“職人芸”なのだ。
冒頭のように、お客さんから「タバコの○○ちょうだい」と言われ、「はい? どのタバコでしょうか?」と言っているような人はまだまだ。銘柄は聞こえているのに、どこにあるのか分からずにアタフタしている人はまだまだまだ。銘柄の番号(タバコを陳列している棚には、各銘柄の番号が記されている)を教えてもらったのにオロオロしている人は、まだまだまだまだである。
コンビニ本部で社員をして10年余り、いわゆるスーパーバイザーなるものを経験し、何を思ったか、独立オーナーに転身した。自分の仕事についての足跡を残すため、仕事の合間にオルタナティブ・ブログ「とあるコンビニオーナーの経営談議」を執筆中。
現在はオーナーを辞め、コンビニライター&アドバイザーをやっている。
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