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» 2015年10月23日 08時00分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:どのように成層圏から地球と「Audi TT」を撮影したのか (1/2)

宇宙を大々的に活用したAudiの新車プロモーション。そのために実際、成層圏まで気球を打ち上げたプロジェクトメンバーに話を聞いた。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 自動車メーカーのアウディが新型スポーツカー「Audi TT」の日本でのプロモーションに宇宙を活用した。そのプロジェクトの裏側について、前回は関係者にプロモーションの企画背景などを聞いた

 後編では、気球を打ち上げて宇宙の映像を撮影するという実行面について、成層圏高度での気球操作や映像取得の技術的な難しさなどをスペースエンターテインメントラボラトリーの金田政太CEO、Kikyu.orgの花田隆貴代表に話を伺った。

明るすぎる地球をどう撮影するか(金田氏)

 今回のプロジェクト実施するためのシステム構成とオペレーションを説明します。システム構成としては、高度3万メートルまで上昇する気球、そこに搭載する映像モジュール、気球の追跡を行うためのトラッキングモジュールから構成されています。

スペースエンターテインメントラボラトリーの金田政太CEO スペースエンターテインメントラボラトリーの金田政太CEO

 オペレーションとしては映像・追跡モジュールを搭載した気球を地上放球し、高度3万メートルまで上昇して地球を背景にホログラムプロジェクション映像を取得、ヘリウムガスの膨張で気球を破裂させ、パラシュートで落下、映像の入ったモジュールを回収するというオペレーションになっています。

 映像モジュールは、カメラ、iPad、透過率30パーセントのハーフミラー、および全体の筐体(きょうたい)から構成されています。そして事前にiPadに保存していたホログラム画像を上空3万メートルで、ハーフミラー上に投影し、その背景に宇宙と地球が入り込むという形で映像を取得しています。撮影した映像は内臓メモリに保存されて、気球とともに落下するので、そこからデータを回収するという流れです。

 今回はアウディのプロモーション画像ということで、非常にハイレベルな映像が求められました。映像モジュール自体の重量は4キログラム程度になったほか、宇宙空間における地球の映像を分かりやすく撮るために画角を広げる必要があったことで、モジュールの横幅は約70センチメートルにもなりました。

 最大のチャレンジは宇宙空間の地球を撮影するための明るさの調整でした。明るすぎると地球が真っ白に見えてしまい、暗すぎると宇宙空間にいることが分からなくなってしまいます。基本的には地球はかなり明るいので、NDフィルターという減光するためのフィルターを介して、背景にある地球の画像を重ね合わせています。NDフィルターは4種類から選定を行いました。

 高度3万メートルでの映像をいかにきれいに撮るかという知見は世の中にはあまりありません。また、今回は実施回数が3〜4回と限られていたため、まずは地上でさまざまなシミュレーションを行い、さらにモックアップを作って、実験を繰り返しながら、最適なモジュール設計を目指していきました。ネット上の画像を見るとこういった裏方作業は見えないかもしれませんが、何度もテスト&エラーを繰り返しました。

映像モジュールのシステム図 映像モジュールのシステム図
実機の開発時の様子 実機の開発時の様子
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