三江線廃止問題は、鉄道事業の「選択と集中」が引き起こした杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2015年10月23日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

三江線だけでは終わらない「選択と集中」

 最近、事業の「選択と集中」という言葉を聞く。鉄道業界においてはJR北海道の大胆な経営再建提案の中で使われた。このたび開通する新幹線や幹線の特急列車、札幌都市圏に集中的に資本を投下し、安全施策を進める。それ以外のローカル線については、普通列車の減便や廃止を検討する。実際、現在、JR北海道の普通列車減便が次々に報じられている。

 JR西日本にとっても、というより、多角経営をする企業は皆、選択と集中をキーワードに経営の見直しを図っている。ブームとも言えそうだ。優良事業に投資し、不採算部門は廃止または他社に売却。JR西日本も鉄道事業、流通、不動産、小売店など多角経営であり、事業の選択と集中に取り組んでいる。それは事業内部門も同じ。鉄道事業の場合は、赤字ローカル線の不採算部門を整理し、特急や新幹線へ資源を集中させたい。

 そう考えると、三江線はJR西日本の選択と集中の第一歩と言える。三江線がどのような形で決着するにせよ、JR西日本が手を引いて決着がつけば、他の不採算路線に対しても、同様の手法でローカル線廃止論議が起きる。

 では、廃止を選択し、赤字負担が減ったJR西日本は、どこへ経営資源を集中させるか。北陸新幹線の小浜〜京都経由案だ。北陸新幹線の敦賀〜大阪間はルートが未定で、米原で東海道新幹線に接続する案、湖西線ルートで京都から東海道新幹線に接続する案、小浜から亀岡経由で新大阪へ直行する案が検討されていた。

三江線川戸駅。線路の形が不自然な理由は、かつてすれ違い設備があったから。増発バス実験を受けて、かつて4カ所あった設備を復活させようと試算したところ、17億円だったという 三江線川戸駅。線路の形が不自然な理由は、かつてすれ違い設備があったから。増発バス実験を受けて、かつて4カ所あった設備を復活させようと試算したところ、17億円だったという

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