さて、こうしたショーでは未来的な動力源が注目される。コンセプトカーは特にそうした新しさを求められるので、燃料電池や電気自動車、ハイブリッドなどの動力を搭載しがちである。果たして、これからのクルマとしてこれらが実用に足るのかということが今回のテーマである。それはつまり、ただでさえ混雑の激しい東京ショーだけに、主流になることのないシステムに時間を奪われることなく、見て意味のあるモデルをしっかり確認するための見分け方だとも言える。
正直に言えば、燃料電池はまだまだ難しい。トヨタMIRAIは700気圧に圧縮した水素を燃料としているが、この高圧タンクはもはや爆弾に等しい。大型トラックのタイヤ交換で毎年プロの整備士が何人も死んでいるが、それがたった20気圧かそこらの話だ。
中身の気体が何であれ、700気圧もあれば建物がひとつ吹き飛んでもおかしくない。現在のように限定的な台数ならともかく、街のそこかしこにそんなものが停まっている状態になれば、テロの標的にされる可能性もある。地球の未来のための環境技術には敬意を表するが、それでも危ないものは危ない。何かよっぽどのブレークスルー技術がない限り、燃料電池は多数派にはならないし、なってもらっては困る。
では電気自動車はどうか? 電気自動車の最大の問題は、ガス欠ならぬ電欠である。例えば、日産リーフの場合、満充電での航続距離は228kmである。しかしこれはメーカー発表値で、冷暖房でも使えば100km以下になる。冷房はともかくとしても、暖房に関して言えば、内燃機関には熱は捨てるほどある。しかし熱源のない電気自動車ではその暖房さえもエネルギーを使わなければ手に入らない。
しかも充電しようと思えば、バッテリー残量警告等が点灯した時点から満充電まで8時間かかる。これは200Vで充電した場合であって、100Vなら計算上倍かかる。急速充電器があれば30分で80パーセントまで充電できるというものの、それで走れる距離は60〜70kmでしかない。出先で電欠したらどうするのか? 充電スタンドであなたは30分待てるだろうか? 充電待ちを覚悟したとして、たどり着いた充電スタンドで先客が充電中だったとしたら? お盆や年末の帰省ラッシュでスタンドに行列ができていたら、もう当日中に充電できる保障はない。
つまり電気自動車は「絶対に電欠させない」という使い方以外では、どうしても利便性に制限がかかってくる。走行中のゼロエミッションはとても魅力だが、それはユーザーの自由と引き換えになっているのだ。
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