ジュンク堂「非公式アカウント騒動」が「言論問題」にすり替えられてしまった理由スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2015年10月27日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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書店員の「言論の自由」をめぐる戦い

 このような「カリスマ店員」が本への愛が溢れたポップを書く。書店員個人の好みや世界観が色濃くあらわれたブックフェアや棚をつくる。そういう自由な売り場が、「本好き」の心を鷲掴(わしづか)みにしたのだ。2012年、ジュンク堂新宿店が閉店する際、「本当はこれが売りたかった」などのメッセージ性の強いポップや企画で、過去最高の売り上げを叩き出したのは今も語り草になっている。

 ところが、先ほどのリリースでは「会社の方針で選書をおこなう」と宣言をしているのだ。これまで店長や書店員個人に任せられていた「選書の自由」が、世間の批判を理由に会社が剥奪をすれば、新たな現場の「不満」を生み出すことになりはしないか。実際に、「ネトウヨ」の批判に屈しなかった難波店長はこのように述べている。

 「コーナーやフェアは書店員個人のメッセージだと覚悟を決めて言うのか、(主張の)バランスを取るのか。選ぶのは店長や書店員に委ねられていると思う」(朝日新聞10月24日)

 書店員の「言論の自由」をめぐる戦いからしばらく目が離せない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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