普通に「おごって」はダメ、一流になるための“極意”とは銀座で学んだこと(3/3 ページ)

» 2015年11月06日 08時00分 公開
[桃谷優希ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

相手の顔を立てる

 私は銀座のクラブでママというポジションにいるのですが、やはり、一流の方は誰に対しても「優しい」です。

 私が名刺を出したときと同じように、女の子の名刺もきちんと見てからしまってくださる方が多いです。中には「どうも」とだけ言って女の子の名刺だけテーブルに置きっぱなしという方もいらっしゃいますが、残念ながらそういう方は、「一流」と言われる方々とは少し違う道を歩いているように思います。

(写真と本文は関係ありません)

 次に、コンクリート会社のC社長とのエピソードをご紹介しましょう。

 銀座のとあるお寿司屋さんで待ち合わせをしていた日のことです。そのお寿司屋さんは、寡黙ながら腕のいい大将でしたので、それまでにも何度か利用していました。

 その日は、若い起業家のような方ばかりで満席。C社長は海外からの出張帰りで飛行機が遅れたため、約束の時間を10分ほど過ぎてからいらっしゃいました。「ごめんね、遅くなっちゃって」と入って来られて間もなく、大将がこのように言ってきました。「あの、板に傷が付くので時計外してもらえますか? ウチは、一枚板なもので」と。

 私は驚きのあまり、目が点になってしまいました。Cさんがその日身に着けていたのはセイコーの薄い革ベルトの時計。店に着いてから5分もたっていませんから、板に時計が当たったなんてこともありません。

 逆に、周りに座っていたお客さまのほとんどが、ゴツゴツとした時計をされていました。起業家のような方ばかりですから、みなさんそれなりの時計をされています。

 なぜ大将はC社長に対して、失礼な言葉を発したのでしょうか。来店してから短い時間でしたが、大将の癇(かん)にさわったのでしょう。

 普通なら席を立ってしまってもおかしくないのですが、C社長はただ「分かりました」とだけ言い、時計を外されたのです。周りのお客さまたちはザワザワとしていましたが、それでもC社長は最後まで席を立つことなく、お会計を済ませてその場を後にしました。

 お店を出て、C社長は「ママが1回でも行ったことのあるお店だから、あんなことで席は立てないよ。私の気分がどうこうよりも、利用したことがあるママに対してとても失礼だよね」と、やんわりとおっしゃいました。

 C社長のように、どんな状況でも紳士的な態度を崩さず、一緒にいる人の顔を立てられる優しい心配りこそが、一流になるための極意なのかもしれません。

桃谷優希氏のプロフィール:

 1988年10月16日大阪府生まれ。16歳のときに処女作『デリンタ(悪魔の子)と呼ばれた天使たち』(文芸社)でデビュー。このほか『国民の声』(文藝書房)に寄稿、『罪追人』(文藝書房)、今春『赦れる天秤』を刊行予定。

 京都ノートルダム女子大学卒業後、北新地のクラブへ。クラブ「城」閉店後、銀座に移籍。銀座40周年の老舗「クラブセントポーリア」でナンバーワンの座を手にして、その後26歳の誕生日に某有名店のママに就任。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.