甲子園で準優勝した仙台育英の監督がグラウンドに顔を出さない理由高校野球に学ぶ組織マネジメント論(3/4 ページ)

» 2015年11月19日 07時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]

グランドが全てではない

 グランド外での取り組みも面白い。仙台育英野球部では定期的に、数人単位でチームを組み、1カ月ほど時間をかけて取り組んだ自由研究の発表を行う“勉強会”を開いている。

 テーマは自由。「料理」「マンガ」「時事ネタ」「自己啓発」などさまざまな話題で盛り上がる。発表方法も自由で、中には“演劇”を通して内容を伝えるチームもある。

 この勉強会は、監督と歳の離れた選手たちがいま、どんなことに関心を持っているのかを知ることができるので、選手との距離を縮めるツールとして生かしているという。

「“俺の世代の感覚についてこいよ”という姿勢では信頼関係を築けません。監督も選手たちの感覚を理解する姿勢を見せないと、選手だって監督を理解しようとはしません。監督と選手の信頼関係は大事です。嫌われると、どんな言葉も相手に届かなくなります」

 また、こうした勉強会などを通じて、チーム全体のまとまりも生まれる。グランド上では距離が開きがちな“ベンチ入り”と“ベンチ外”が共同作業を通じてコミュニケーションを取ることにより、最後の夏の大会に向けて一体感を高めていく狙いもあるのだ。

photo ピッチング練習場

 さらに、グランドでは分からない選手の能力を発見する狙いもあるという。佐々木監督は野球の実力とは別に、選手のキャラクターを見て、チームに良い影響を与える選手を評価する。

 「野球以外の共同作業をさせているときのほうが、選手のさまざまな人間性が見えてきます。自然と周りの雰囲気を明るくできるような選手は、野球がうまくなくてもチームに必要なんです。実力以外の部分を見てベンチ入りメンバーや遠征に連れていくメンバーを考えてます」

photo 仙台育英の部室。ここで勉強会などを行う

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