ガンダム、ジェット機、スターウォーズ……南海電鉄「ラピート」の革命杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2015年11月27日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

賛否両論だった「鉄人28号マスク」

 南海電鉄50000系は、SFコンテンツとのタイアップにピッタリの造形だ。元々の青色塗装もSFに出てきそうでカッコいい。しかし、この造形はデビュー当時の鉄道趣味界では賛否が分かれた。当時20代だった筆者もビックリした。既存の鉄道車両デザインの延長にはない形だった。

 鉄道車両のデザインに作法があるとすれば「機能美」の追求であった。いっさいの飾りを廃し、機能性を極めれば、形は自然に整っていく。蒸気機関車も、新幹線も、特急電車も、通勤電車も客車も、鉄道車両の形には、その形になるべき理由があった。飾りなどなくてもいい。

 南海電鉄50000系は、こうした先人技術者の作法を無視した。運転台付近を球体のように丸くする。前面の真ん中から鼻筋を尖らせる。この2つのデザインに、走行に必要な機能はなかった。ただカッコ良くしたい、というだけのデザインだ。南海電鉄はこのデザインコンセプトを「レトロフューチャー」という。Webサイトにも「力強さと速さを融合させた先頭形状と人間味ある曲線、航空機のイメージから生まれた楕円窓」とある。

 つまり、実際の機能よりもイメージを優先した。そのカッコ良さは分かりやすい。しかし、「飾り物が無いからこそ美しい」と考える保守的な鉄道ファンとしては許せない形状だ。どちらかというと、私もそうだった。そのカッコ良さはあざとい。もし、当時、2ちゃんねるがあったら、賛否両論で炎上間違いなしだ。いや、パソコン通信のBBSではどうだったか。鉄人28号に似てる、と盛り上がる一方で、鉄道車両として異論もあった気がする。必要も無いのに先端が刀のように尖っていて、踏切で人やクルマと衝突したら真っ二つにされそうだ、というような。

南海特急黒いラピート スターウォーズ フォースの覚醒号 【STAR WARS】。21日から運行開始した「南海特急黒いラピート スターウォーズ フォースの覚醒号」。黒いボディは悪役のイメージ。この顔つきがよく似合う。動画撮影:ayokoi氏
「南海特急黒いラピート スターウォーズ フォースの覚醒号」車体イラスト全体図 (C) & TM Lucasfilm Ltd.(写真提供:南海電鉄) 「南海特急黒いラピート スターウォーズ フォースの覚醒号」車体イラスト全体図 (C) & TM Lucasfilm Ltd.(写真提供:南海電鉄)

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