アスクルやトリドールが取り組んだ社内コミュニケーション改革とは?(2/2 ページ)

» 2015年11月27日 12時00分 公開
[ITmedia]
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無駄な情報共有がまん延していた……

 続いて同セミナーの特別講演に登場したのは、讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」などを運営するトリドールで、営業本部 営業サポート部 営業企画課 課長代行を務める石川暁氏である。

トリドール 営業本部 営業サポート部 営業企画課 課長代行の石川暁氏 トリドール 営業本部 営業サポート部 営業企画課 課長代行の石川暁氏

 同社は現在、世界20カ国以上、1000店舗以上を展開する外食チェーンとして、事業を急拡大している。そうした中でより重要となってくるのが、経営はもとより、現場での業務の意思決定をいかに速くするかとともに、社員間の情報共有をしっかり行えるかどうかである。その実現に向けて、石川氏自らがリーダーとして、2014年8月から社内SNS導入プロジェクトを遂行している。

 従来、同社は社内コミュニケーションのツールとして主にメールを利用していた。ところが、関係者全員を「Cc」に入れる社内文化があったことで、本質的には必要のないメールも届き、その処理作業に追われてしまったり、重要なメールを見落としてしまったりという事態が起きていた。

 また、部内などの会議についても、それまでにやり取りされた業務関連のメールを統合してレポートを作成し、それをまた会議の場で共有するという、無駄な時間が生まれてしまっていたという。そこで「社内SNSを効果的に使うことで情報共有をスムーズにし、浮いた時間を社員は営業活動に当てたり、企画を考えたりできるようにしたいと考えた」と石川氏は振り返る。

社内SNSによって数十万円のコスト削減

 では、実際どのように社内SNSを導入していったのだろうか。まずは準備段階である。ここで気を付けたのは、「何だか良くなったような気がするね」という曖昧な結果にしないことである。そのために、「対象者(範囲)を想定すること」「成功(失敗)判定条件を定めること」「計測指標を設定すること」「運用ルールを決定すること」と、いくつかの基準を設けるようにした。

 例えば、運用ルールに関しては、「お疲れさま」や「宜しくお願いします」など、メール文書で使う挨拶文句は入れないようにしたり、基本的にSNS以外での業務連絡は認めないようにしたりした。

 次に、検討フェーズである。ここでは導入者が社内SNSの機能や事例をすぐに理解できるようにした。主なエンドユーザーとなる店舗スタッフは主婦など40〜50代の女性が多かったので、この層が操作しやすいユーザーインタフェース(UI)などを用意した。また、このプロジェクトの責任者を社内において明確にすることで、プロジェクトの方向性がぶれないように注意した。

 その後、導入フェーズではユーザー教育を、浸透フェーズでは、営業部長やチーフマネジャークラスの役職者を巻き込むとともに、彼らの会議を社内SNSに移行することで、普及を図っていった。

 最後の拡大フェーズにおいては、むやみやたらにユーザーを増やすのではなく、成果を横展開することで徐々に増やしていった。「社内SNSで社長がブログを書いていて、それを見たいので登録したいという社員が出てきた。本来の目的と異なるため、そうした要望には、ほかに活用用途がないのであれば、ブログ内容を転送するので、登録は断りたいと回答していた。また、利用頻度の少ないユーザーは特に通知することなく管理者権限で削除していた。こうした強い目的意識が必要だった」と石川氏は力を込める。

 そうした取り組みの結果、2015年10月末までにユーザーは421人となり、独自の指標を基にした換算で、メールを使った情報共有と比べて3万7891分の削減、金額にして56万8365円相当の効果が出たとしている。そのほか、波及効果として、人件費や出張費、印刷費などの会議開催費用も大幅に削減している。(※数値は月間)

 プロジェクト成功の肝について、石川氏は「やはりプロジェクトの責任とトレードオフに、担当者に強い権限を持たせたこと」と話す。こうした責任の所在を明確にすることが、特に社内での浸透、拡大フェーズにおいて重要なファクターになったとした。

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