環境保護活動とビジネスは共存できる――パタゴニアの辻井隆行支社長(6/6 ページ)

» 2015年12月03日 08時00分 公開
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辻井: 市長選も対立候補が立たなかったくらいですからね。市民の方も、平成6年(1994年)に起こった渇水を知らない世代は、そもそもダム問題への関心が薄いように感じています。だから、時間との闘いではありますが、ビジネスで培った広報・マーケティングなどの手法を生かして、長崎・佐世保の方たちがこの問題にまず関心を持ってもらえるように働きかけて行くつもりです。石木ダムの問題を知ることは、市民の方々が自分の払っている税金の使い道について考えることにつながるし、自分の子どもたちの未来を考えることにもつながるからです。日本ではまだ事業認定が告示されたダム事業が止まった例はありません。でも、明らかにバランスを欠いた石木ダムがその最初の例となれば、日本各地で起こっている悲しいケースが見直されるきっかけになるかもしれません。そのためにはぜひ、パタゴニア以外の企業の参画も募っていきたいですね。

永井: なるほど。近年CSR(企業の社会的責任)に代わる概念として、CSV(共通価値の創造)という概念が提唱されていますが、社会の課題解決に積極的に取り組むことが、逆に事業の継続可能性を高めて、リスクを下げることもできる、ということがよく分かりました。本日はお忙しい中ありがとうございました。

 アイディール・リーダーズが提唱する「理・響・躍」という理念にそってインタビューを振り返ると、パタゴニア、そして辻井氏の歩みは、自分たちが欲する商品を生み、事業が継続するための環境を守っていく、という「理」に叶ったものだ。それを「環境インターン」という仕組みで組織に「響」かせている。それが大きな実を結ぶかどうか? 石木ダムは、とても大きな課題で簡単に乗り越えられるものではないが、その結果だけでなく過程そのものが、パタゴニア、辻井氏の更なる跳「躍」となるはずだ。その推移を見守っていきたいと思う。

聞き手:永井恒男

 1997年、野村総合研究所に入社。2005年に社内ベンチャー制度を活用し、エグゼクティブコーチングと戦略コンサルティングを融合した新規事業IDELEA(イデリア)を立ち上げ、以後10年間事業を推進。2015年4月にコンサルティング会社、Ideal Leaders株式会社を設立し、代表取締役 Founderに就任。ソーシャルイノベーションの実現・加速を目指し、2016年2月23日、企業とNPOの共創を生み出すアイディアコンテスト最終審査イベントを開催予定。詳細はこちらから。


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