次のヒット商品は? 1億総「シンデレラコンプレックス」のワナ森永卓郎の“白馬の王子”理論(3/3 ページ)

» 2015年12月07日 07時30分 公開
[森永卓郎ITmedia]
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新商品は「古い」

 以上の変化をまとめると、(1)新製品がなかなかヒットしない(成功確率の低下)、(2)当たっても、それがどんどん小粒化している、(3)しかも、それがあっという間に消えるという三重苦に見舞われているというのが、これまでの日本の産業が置かれている現状なのだ。

携帯電話が日本で使われたのは大阪万博。もう45年前だ 携帯電話が日本で使われたのは大阪万博。もう45年前だ

 それでも画期的な商品が出ているという意見はあるかもしれない。例えば、携帯電話が日本で最初に使われたのは、1970年のこと。大阪万博の会場の構内通話が携帯電話だったのだ。つまり、携帯電話は45年も前の商品なのだ。インターネットは1960年代にその原型が登場している。1970年には、国内で電気自動車が発売されていた。最近の巨大市場を創り出している商品は、とてつもなく「古い」商品なのだ。

 それでも、「iPhoneのような画期的な新製品ができているではないか」と思われるかもしれない。だが、iPhoneはiPodと携帯電話を組み合わせたものであり、iPodは小型の端末とウォークマンを組み合わせたものなのだ。

 結局、最近、登場してきた画期的な新商品の多くは、画期的な技術に基づいて作られたものではなく、既存の技術や商品をうまく組み合わせて作られたものに過ぎない。だから、画期的な技術が生まれ、それが産業をけん引してくれるという期待は、白馬の王子様が迎えに来てくれるという「シンデレラコンプレックス」であり、妄想に過ぎなかったのだ。

 そうした中で、今、新たな技術の組み合わせが、世界を変えようとしている。それは、人工知能とロボットの組み合わせを活用する「第四の産業革命」と呼ばれるものだ。この技術革命は、産業のあり方から、我々のライフスタイル自体を根底から変えていくだろう。

(次回につづく)

著者プロフィール

森永卓郎(もりなが たくろう)

東京都出身。東京大学経済学部経済学科卒業。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所等を経て、現在、経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。

専門は労働経済学と計量経済学。そのほかに、金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。2014年10月自身のコレクションを展示する「B宝館」を開設。

主な著書に『<非婚>のすすめ』(講談社現代新書 1997年)、『バブルとデフレ』(講談社現代新書 1998年)、『リストラと能力主義』(講談社現代新書 2000年)、『日本経済「暗黙」の共謀者』(講談社+α新書 2001年)、『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社 2003年)、『庶民は知らないアベノリスクの真実』(角川SSC新書 2013年)など多数。


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