鉄道趣味系クラウドファンディング、成功の決め手は?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2015年12月11日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

北斗星の寝台車輸送に700万円、失敗は残念

 「寝台特急『北斗星』を守りたい! 〜JR北海道所属の北斗星をみんなの憩いの場に〜」は素晴らしいプロジェクトだ。711系電車保存プロジェクトに通じるものがある。主催者は商店を経営している鉄道ファンだ。JR北海道から寝台特急北斗星の寝台車を引き取り、千葉県で宿泊できる状態で保存したい。目標は925万円。164人から約245万円を集めたが、残念ながら失敗に終わった。

 寝台特急北斗星に思い入れのある鉄道ファンは多いはずだ。失敗の理由は何かというと、説明不足に尽きるだろう。目標金額の費用内訳の中に、車両購入費がない。なぜ北斗星に縁のない千葉県で保存するかも、ファンドの紹介にはない。さらに、タイトルに「鉄道」「列車」「駅」のキーワードがなく、Makuakeでこの言葉で検索しても表示されない。私が作成したリストに加えた理由はネットで話題になったからだ。

 車両について、無償譲渡か、711系のように鉄くずとして購入したかも不明。JR北海道は協力したと記述されているけれど、車両購入の確約がなかった。設置場所の情報もない。土地はどうするか。そのヒントは立案者の紹介ページにあった。千葉県で商店を経営していて、その駐車場の片隅に置くようだ。JR北海道と契約したという文字は、立案者のブログで確認できた。そういう情報は、最初からファンドページで書けばよかった。

 少額なりとも出資者としては、「なぜ700万もかけて運ばなくてはいけないか」「工事費くらい自己負担できないのか」と思う。しかし、それらを記述してしまうと、「いち鉄道ファンが、自宅に車両を保存したいから輸送費と工事費を求む」という、身もふたもない事案になってしまう。これが「北斗星の故郷で安く土地が手に入る北海道内の土地を購入して」となれば、また違った結果になったかもしれない。もっとも、そういう人がいなかったから、千葉県の彼が手を挙げてくれたわけだ。その勇気は称えたい。

北斗星の寝台車を千葉へ運ぶ案件は失敗。日本海の寝台車を太平洋側の岩泉へ運ぶプロジェクトは成功 北斗星の寝台車を千葉へ運ぶ案件は失敗。日本海の寝台車を太平洋側の岩泉へ運ぶプロジェクトは成功

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