では、この2社の動きの中で、VAIOの存在はどう見たらいいのだろうか。
VAIOは今回の統合については完全否定の姿勢を示すが、東芝、富士通の事業再編ののり付け役としての役割が見逃せない。
今回の統合においては、東芝、富士通の2社は、事業分離、再編したいと考えながらも、IoT(モノのインターネット)時代に向けて、PC事業を完全に手放なさず、紐付けしておきたいという気持ちが見え隠れする。例えば、IoTによるデータ収集や、収集された大量データを分析する上ではフロントデバイスが必要で、そこにPCで培った技術の応用は不可欠という考えがあるようだ。
また、国内PCメーカー同士の統合という選択肢を選んだ背景には、外資系PCメーカーへの「売却」という選択肢がなくなった結果と見ることもできる。
レノボは既にNECを買収していることに加えて、米HPはPCおよびプリンタ事業を分社化し、今秋に新たなスタートを切ったところ。米DELLも、今年10月にIT業界最大となる670億ドル(約8兆円)でハードウェアベンダーの米EMCの買収を発表したばかりだ。それ以外の売却先もあったはずだが、例えば、東芝、富士通と緊密な関係にある台湾のメーカーも食指を動かさなかった。
振り返れば、2005年にレノボがIBMのPC事業を買収した際の最終的な買収金額は、17億5000万ドル。現在の為替換算で2100億円となる。現在の東芝、富士通のPC事業には、そこまでの価値はないにしても、現時点で売却益を得る道筋が消えた中では、東芝、富士通ともに、連結対象からは外しながらも、一部出資という形で将来の売却に向けた布石を打っておきたいという思惑も感じられる。
だが、2社による統合だと出資比率が50%ずつになる、あるいはどちらかが50%以上の出資比率を持つ必要がある。これでは連結対象からは外れないことになるのだ。しかし、ここにVAIOが組み合わされば、各社ともに、出資比率のバランスがうまく取れるようになる。
VAIOには、ファンドである日本産業パートナーズ(JIP)が出資している。VAIOが東芝と富士通の2社に絡むことによって、IT業界にも精通したファンドである同社が参画したPC事業統合シナリオが描けるというわけだ。
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