日本の女性活躍に向けた5つの優先施策とは?(6/6 ページ)

» 2015年12月18日 13時55分 公開
[Strategy& ]
プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー株式会社
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組織の変革への取り組み

 女性の活躍できる職場の整備と言っても、その実現のために取り組むべきことは多岐にわたる。まずは、評価制度の見直しが必要となる。上司のお気に入りという馴れ合いの評価制度から脱し、制度の均質性と透明性の向上がされないと、どの女性が評価されるべきかが不明確である。

 また、限られたポストを前提に女性の活躍を論ずれば必ずその直接の競争相手となる(優秀な)男性があおりを受けることとなる。既に「あがった」(優秀ではない)男性が管理職ポストに就いたままであるのに、である。先進的な企業の多くは、女性の活躍を論じる際には、業績連動と降格制度を同時に導入し、若手の男性も十分に登用される道を用意している。

 これらの取り組みは組織とその構成員の行動に大きな変革をもたらすものとなる。この変革を成功させるためには、男女を問わず、インフルエンサー(影響力の大きい人材)と、ロールモデルを活用するべきである。具体的には、役員、部長クラスの女性に加え、女性の幹部候補を育成してきた男性の努力を表立って称えて、変革に向けた推進力とする。従来型の均質さから逸脱した人材(女性のみならず、外国人や中途採用者なども含め)を割り当てられたリーダーは、時に、当の人材自身以上に、大きな障壁を感じ、解決のための努力をしてきている。

指標の共有

 施策の成功度を測るための指標を設定し、目標に向けての進捗度も測るべきである。目標の例としては、会社における女性管理職の人数だけではなく、各部署内におけるワーキングマザーの正社員に占める比率などでも良い。こうした目標は、対外的に公表しなくてもよいし、「必達」でなくともよいが、結果が出る取り組みのため設定することが有効である。

 日本コカ・コーラ株式会社は、女性がより活躍できるように会社全体の目標を設定している。特に同社は、女性社員は、女性消費者のニーズについて重要な洞察をもたらしてくれると考えているためである。同社はその目標を達成するために、各種の社内のネットワ−キングの機会を提供しており、自発的な相互の啓発や、課題の解決が多くなされ、社内の空気が変わりつつある。

 ある幹部は「我々の顧客の70〜80%は女性である。我々は管理職の少なくとも40%を女性にする目標の達成を喫緊の課題と考えている」と述べている。

先入観を排除する

 思い込みからかたくなに抜け出さない、ただそれだけの理由で、女性の活躍が阻まれることは多い。管理職の立場からは、女性の部下の昇進や転属を、家庭との両立などを先回りして配慮して見送るケースもあるかもしれない。こういう「配慮」は、思いやりの反面、先入観により本人の機会を奪っている可能性があり、企業にとっては人材の最大限の活用を阻害してしまう。

 このジレンマは、実は簡単に解決することができる。ただ本人に聞いてみるだけで良い。「大阪工場の工場長になってみたいか?」「半年間米国で新規事業立ち上げを指揮する気はないか?」。もし、彼女にその気がなければ、自分で意思表示をするはずである。

 しかし、上司が何も聞かずに勝手に決めてしまえば、上司も部下も機会を逃してしまう。男性にも、女性にも、どういうキャリアを望むのかを、きちんと直接聞くことが重要である。

他の組織との協働

 ほとんどの日本企業は、多様性と、組織の柔軟性を高めるためには、どこも似たような課題に直面することであろう。これらの課題を解決するために互いに手を組むことで、多くの恩恵を得ることができる。中でも、ベストプラクティスや、育児などのサポートサービス、人材管理の共有化などの3つの領域が考えられる。


 日本は、自らを経済成長の軌道に再び乗せられる立場にあり、今、日本にとっての追い風も吹いている。国は女性たちがより経済に貢献できるようにする政策策定も行っている。ここから何をするかは、企業の取り組みにかかっている。

 日本企業は、グローバル市場で成功するために、自社の多様性を向上させ、より柔軟な組織へと生まれ変わらなければならない。日本企業が成功するには、女性(のみならず、若手、中途採用者、外国人など含む多様な人材)が活躍し得る環境を整えなければならない。そのために企業が取る施策は、組織全般に多様性、柔軟性をより浸透させ、新たな機会の創出につながるのである。

著者プロフィール

ヴァネッサ・ウォレス

Strategy& 東京オフィスのパートナー。25年以上にわたり、金融サービス分野を中心に、消費財やヘルスケアなど多様な業界の、ポートフォリオや事業部戦略、戦略的リスクマネジメント、ガバナンス、組織リーダーシップや成果マネジメントなどの課題に取り組んでいる。


唐木明子(からき・あきこ)

Strategy& 東京オフィスのディレクター。国内外の金融サービス業、リテール、ヘルスケア、そのほか事業会社のプロジェクトを手掛けている。新規事業・成長戦略、商品・マーケティング戦略、価格戦略、データ分析に基づく営業改革、組織改革といったテーマに取り組んでいる。


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