マツダが構想する老化と戦うクルマ池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2015年12月21日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

感情の見える化と心の測定技術

 そのためには人の心を定量化して測定しなくてはならない。具体的にどうやって人の心を測定するのだろうか? まずは定量化からだ。図2を見てほしい。人の感情を分析して5つのパターンに分類した図だ。5色に置き換えられたそれぞれの感情パターンの中では、緑の「安定感」が最も好まれ、健常者はこの緑の状態を保とうとするのだそうだ。

図2 人の感情を分析して5つのパターンに分類(出典:東京大学) 図2 人の感情を分析して5つのパターンに分類(出典:東京大学)

 しかし医学的に「うつ」の状態に入ると青色の「不安」へとシフトする。それが進めば赤色の「嫌悪感」になる。嫌悪は常識的に考えて良い状態とは考えにくい。緑をはさんで反対側にいけば「好感」で、本人にとっては快いが、行き過ぎれば「躁」状態になる可能性がある。最悪なのが灰色で示される「快感/痛感」で、状態としては倒錯や錯乱反応とみなされ医療の介入が必要とされる状態となる。

 では、こうして定量化した感情をどう測定するのだろうか? 実は上述の5つの感情は、体のさまざまな部分に影響を及ぼしている。その1つに声帯の緊張状態があると言うのだ。この緊張状態によって発声が変わる。われわれも「あれっ? 声に元気がないな」というようなことを感じることがあるように、音声を分析することで、快活度や寛ぎ度を判定することができるのだという。

 そこまで分かれば実現化の手段があればいい。そこで目をつけたのがスマホだ。アプリケーションによって日々の通話音声を分析して「元気圧」と「活量値」をはじき出す。元気圧とは情動(Emotion)のことで、瞬間的な生理反応を表す。活量値とは感情(Feeling)のことで、元気圧に加えて環境や状況などの認知が影響して比較的長時間継続する心の状態を表す。このアプリケーションではそれをメーターやグラフでビジュアル的に本人に見せるとともに、東京大学大学院の医学系研究科音声病態分析学講座に送られて研究される。

 この音声病態分析学講座は、マツダと三井情報が出資して立ち上げた社会連携講座だ。アプリケーション「MIMOSYS」の開発は横浜市のPST株式会社が担う。現在は無料アプリを配布して広く協力者を募りながら社会実装実験を行っている最中だ。ちなみに今のところこのアプリが使えるのはAndroidのみ。iPhoneで使えないのは音声データの分析が米Appleの定める規約に抵触するからだという。

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