自治体のキャッチコピーは、なぜ“メルヘン化”してしまうのかこだわりバカ(5/5 ページ)

» 2015年12月22日 08時00分 公開
[川上徹也ITmedia]
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機能する自治体キャッチコピーとは?

 逆に言うと、きちんと目的を明確にすれば、自治体でも受け手の心に刺さるキャッチコピーを書くことは可能だ。

 例えば千葉県流山市は、子育て世代に東京都内からの移住を募るポスターを、都内の主要駅などに掲載している。これは子育て世代を移住させることで高齢化に歯止めをかけようという、市長肝入りのプロジェクトだ。認可保育所の定員数を思い切って増やすなど教育環境や住環境の整備に力を入れているという。

 そんな流山市のポスターのキャッチコピーは「母になるなら、流山市。」というものだ。実際に流山市に住んでいる家族が「自然の中で子育てしたくて都内から移住してきた○○さん」というキャプション付きで写っている。これは自治体によくある空気コピーのポスターとは対極で、ターゲットには非常に刺さるコピーになっている。実際に流山市は30代の人口が急増しているらしい。

流山市のキャッチコピーは「母になるなら、流山市。」

 このキャッチコピーは都内からの移住者を募るという目的の川下コピーではあるが、流山市のブランド向上という意味で川中コピーの役割も果たしている。流山市は、今後もさらに教育環境を充実し、良質な住環境の整備することで、「千葉の二子玉川」のような位置付けの街にすることを目標にしている。このように川上の理念がきちんと明確化されていると、川中川下でもいいキャッチコピーが生まれやすい。だからまず何よりもまず「川上から始めよ」だ。

プロフィール:川上徹也(コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表):

 大阪大学卒業後、大手広告代理店に入社。営業局、クリエイティブ局を経て独立。コピーライター&CMプランナーとして50社近くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。

 「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリー・ブランディング」という言葉を産み出した第一人者としても知られている。現在は広告にとどまらず、「言葉」を変えることで、企業団体・社会・制度などを輝かせる仕事に取り組んでいる。

 著書は、シリーズ累計11万部突破の『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)など多数。 最新刊『あなたの弱みを売りなさい』(ディスカヴァー21)好評発売中。


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