再契約を結んだ岩隈久志にみる「メジャーリーグ・ビジネス」の世界赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)

» 2015年12月24日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


 メジャーリーグはやはりシビアでビジネスライクな世界だ。メジャーリーガーの岩隈久志投手が現地時間の12月17日にシアトル・マリナーズと再契約を結んだニュースを知ったとき、それを強く再認識させられた。今回は岩隈の去就をめぐるメジャーリーグ特有の「マネーゲーム」の動きをざっと振り返り、当事者たちのそれぞれの思惑についてビジネスの面を踏まえながら分析してみたい。

 メジャーリーガーの日本人投手は世間的にみてテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有とニューヨーク・ヤンキースに所属する田中将大の2人に注目が集まっている傾向があるが、この岩隈も成績から判断すれば両者とまったくそん色のないレベルの大物だ。マリナーズに所属したメジャー4年間で47勝をマークし、今年8月12日のボルチモア・オリオールズ戦ではノーヒット・ノーランも達成している。

 その大物・岩隈が今オフはメジャーの“ストーブ・リーグ”で主役になった。11月上旬に今季契約最終年のマリナーズからFAとなって球団側から「クオリファイイング・オファー(QO=内容については後述)」として1年1580万ドル(約19億円2000万円)の2年契約(3年目はオプション)を提示されたが、その条件を岩隈と代理人側は拒否。この時点で他球団も含めた岩隈争奪戦にゴングが鳴らされ、今季年俸の700万ドル(約8億5000万円)から来季以降の条件が一気に跳ね上がると誰もが予想した。

 新たに他球団との交渉を進める中で、岩隈側は6日にロサンゼルス・ドジャースと3年総額4500万ドル(約54億5000万円)の大型契約で基本合意に至った。ところが、その後の身体検査で異常が見つかったとして契約が白紙撤回され、16日にドジャース側から大幅な条件の見直しを求められた。

シアトル・マリナーズと再契約を結んだ岩隈久志投手(出典:シアトル・マリナーズの公式Webサイト
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