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今後期待の省燃費技術は?池田直渡「週刊モータージャーナル」 2016年新春特別編(5/5 ページ)

» 2016年01月04日 06時15分 公開
[池田直渡ITmedia]
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最も有望な次世代システムは?

 3つのシステムが出そろったところで、どれが一番良いのだろうか。日本の道路環境かつ一般道中心ということになれば、恐らくハイブリッドが有利である。加減速が多いという状況ではこれに勝るシステムはなかなか難しいだろう。ただし、プリウスに代表されるような、電気だけでも走れる、いわゆる「ストロング型ハイブリッド」からエンジンのトルクを補完する「マイルド型ハイブリッド」へと徐々に主流が移っていくはずだ。

 適正な排気量の直噴ガソリンエンジンに、アシスト用としてこのマイルドハイブリッドを採用する。現在最も期待されているマイルドハイブリッドシステムは、極めて追加部品が少ないため、安価に製造できる上に、重量増加も少ない。実利を取るために非常に優れたシステムになっている。クランク軸からVベルトで駆動する発電機を、アシストが必要なときには作動を逆転させてモーターとして使う。

 高価で重い走行用のバッテリーを廃止して、キャパシターを採用するとさらに理想的だ。バッテリーとは電気で起こした化学反応で、化学エネルギーとしてエネルギーを蓄えるのだが、電気と化学のエネルギー変換時にどうしてもロスが出る。

マツダは「i-ELOOP」で自動車用として初めてキャパシターを採用。i-ELOOPではキャパシターに貯めた電力を補機の駆動だけに使い、エンジン駆動は行っていない。手前フロントバンパーの角の内側に収納されているのがキャパシター マツダは「i-ELOOP」で自動車用として初めてキャパシターを採用。i-ELOOPではキャパシターに貯めた電力を補機の駆動だけに使い、エンジン駆動は行っていない。手前フロントバンパーの角の内側に収納されているのがキャパシター

 一方、キャパシターは要するにコンデンサーのことで、電気を電気のまま貯める仕組みだ。当然変換ロスが少ないし、変換がいらない分、貯めるのも使うのもバッテリーの10倍も急速な単位時間あたり蓄放電が可能だ。バッテリーに劣るのはエネルギーの長期保存性だが、走行中はどのみち頻繁に電気を出し入れするので、デメリットは極めて限定的だと言える。もう一点の問題はキャパシターの物理的な大きさだ。重量もバッテリーよりマシだとはいえ、軽いとは言いがたい。体積あたり、重量あたりの蓄電量の向上が望まれる。

 以上の点から、筆者が2016年に最も期待している省燃費技術は、キャパシターを使ったマイルドハイブリッドシステムである。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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