注目 タレントマネジメントを導入する企業

タレントマネジメントが注目されるようになった背景(2/4 ページ)

» 2016年01月05日 12時00分 公開
[井口裕右ITmedia]

タレントマネジメントの背景に、企業を取り巻く“2つの変化”

――日本国内でタレントマネジメントの必要性が高まってきた背景について教えてください。企業はタレントマネジメントに何を求めているのでしょうか?

渕田氏: 背景には、企業を取り巻く2つの流れがあるのではないかと思います。1つは、経営環境の変化です。具体的には、グローバルでの競争が激化したり、商品・サービスに対するリテラシーの向上や情報格差の縮小が起きたりといった顧客ニーズの変化、ITの利活用によるビジネスモデルの変化といったもの。

 一方で従業員側も、長時間労働からライフワークバランスの重視への変化や労働人口の現象、ダイバーシティへの意識拡大といった“働くこと”への意識の変化が起きています。こうした社会変化や経営環境の変化の中で企業が競争を勝ち抜くためには、他社にはない、過去にはない新しいビジネスモデルや価値の創出が必要になってきています。

 もう1つの流れは、これまでの企業の人事マネジメントに対して疑念が広がってきているということです。つまり、今まで競争を勝ってきた企業には、必ずその中心となる人材がいる。しかし、この人材で今後も勝ち続けることができるのか、ということに対して疑問や懸念を抱き始めているのです。

 例えば、コミュニケーション能力やチームワークを重視してきた採用基準は従来通りでいいのか。昔の競争状況であれば、チームの協調性を重視して勝てる状況だった。しかし、新しいアイデアの創出を求めるこれからのビジネスにおいて、その採用基準が果たして本当に適切なのか。「ダイバーシティ(多様性)」といった特長のある“尖った”人材を求めておきながら、(採用基準が変わらないので)実は同質化してしまっているのではないか。

 また人材育成の面では、日本はこれまでミドルマネジメント層が強いと言われてきましたが、それに対する疑問も広がっています。組織の中で従業員の構造はピラミッド型になっていて、先輩が後輩を育てるというサイクルができ上がっていました。しかし、不況やリストラの影響もあり、そのサイクルが途切れたり、リソース不足のためミドルマネジメント層が現場の仕事に追われて人材育成ができない状況が生まれています。

 加えて、これまで管理職などへの人材登用の基準は過去の実績が最も重視されてきましたが、それが本当にいい選抜方法なのかということにも懸念が生まれています。しかも、その実績というのは先輩の頭の中にある部下の特長や実績といった過去情報を拠り所にしているのです。こういったさまざまな人事マネジメント上の懸念を受けて、求める人材をこれまで以上に明確化し、計画的に育成していくということの必要性が高まっています。

 こうした、新しいアイデアを創出しなければならないという社会環境・経営環境の変化から生まれるニーズと、求める人材を計画的に育成しなければならないという人材マネジメントのニーズを背景にまとめると、これからの時代は人材の希少価値(人材が持つ能力や資質)をこれまで以上に重視しなければ、競争優位性を生み出すことができない状況になってきているのです。

 日本の人事マネジメントはこれまで年次管理、年功序列で行われ、また社員の管理も総合職、一般職、非正規(派遣や契約社員)といったカテゴリーで行われてきました。しかし、この仕組みでは人材の良さを引き出し、経営に生かすことが難しくなってきています。こうした従来の考え方を撤廃しなければならない時期に来ているのです。

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