注目 タレントマネジメントを導入する企業

タレントマネジメントが注目されるようになった背景(4/4 ページ)

» 2016年01月05日 12時00分 公開
[井口裕右ITmedia]
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これまでの人材マネジメントを、“より確かな”レベルに引き上げる

――このような状況を踏まえて、企業はタレントマネジメントをどのように考えていく必要があるのでしょうか。

渕田氏: 私は、タレントマネジメントを議論するためには枠組みが必要なのではないかと感じています。競争に勝ち抜くためには新たな価値の創造が必要であり、企業は人材一人ひとりを見つめて、「何ができるのか」「何ができそうか」「何をやらせたいか」という部分に視点を移していかなければなりません。それが、企業がタレントマネジメントを考える出発点になるのです。その上で、企業が求める人材の発掘、配置・育成、動機づけを「より確かに」行っていく必要があります。人材発掘、配置・育成、動機づけは、企業がこれまでもやってきたことです。しかし、これを「より確かに」行うということは、これまでとその方法を変えなければならないことを意味しています。

 例えば、その人材の特長や適正を見極めるためには、上司部下の関係だけで生まれる“頭の中のデータ”で人材を捉えるのではなく、その人のスキルや業務経験を共有化して複数の社員で多角的に評価して、適正に合わせたキャリアプランを考えることが必要です。人材のスキルや業務経験を企業の財産にして、複数の眼で人材を発掘しようという考え方です。

 人材の育成にとって重要なのは「どんな仕事をやってもらうか」という点。人事の世界では人材成長の要因として「業務経験70:先輩や上司の指導20:研修10」という法則が言われていますが、人材が成長するためには業務経験が大きな影響を与えるものです。そのためには、その人がどういう人材かを正確に見極め、“(成長のためには)このチャレンジをさせたい”という考えのもと、最適なポジションに配置して経験を積ませることが最も重要なのです。

 加えて、自らキャリアプランを描けるように動機づけをしていくことも大切です。これまでは、会社からプランを与えられたり、年功序列で自分の将来が(先輩の姿を通じて)見えていたりしていました。しかし、M&Aや組織再編などが活発で会社が将来どうなるか分からない環境変化の激しい状況では、社員が自らキャリアプランを描いていくことが求められます。企業はそのための動機づけをしていかなければなりません。タレントマネジメントにおいては、こうした確かな人材発掘、配置・育成、動機づけの方法を、企業ごとにきちんと考えていく必要があるのです。


 後編では、このような傾向を踏まえて具体的に企業がどのような形のタレント・マネジメントを実践しているのか。そしてタレント・マネジメントで陥りやすい失敗などについて、引き続き渕田氏に話を聞いていく。

つづく

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