スズキは、マーケットの声をフィードバックして新開発を素早く行うという手法で、ダイハツはマーケットの声に即応できるモジュールを簡単に交換できる手法で、軽自動車のスポーツ戦略を組み立てている。
しかし、軽自動車は既に自動車マーケットの4割に届き、一部には「必要最低限であるからこそ軽自動車の税軽減は許容されているのであって、こうしたぜいたくなモデルは普通車と同等の課税を受けるべきだ」との声もある。「いや、そもそも国際的に見れば軽自動車程度の課税が妥当であって、普通車の課税が過大過ぎるのだ」という反論もある。急速に拡大してきた軽自動車の市場占拠率が軽自動車の税負担に構造的変化をもたらす可能性もある。そもそも軽自動車は税制によって生まれ、拡大してきた商品だけに、制度設計が変われば、その地盤を一気に喪失する可能性もある。
しかも足下を見れば、2015年の販売実績は2014年に対して、スズキは前年比76.9%、ダイハツは85.5%とそれぞれ大きくマイナスになっている。軽自動車税増税の影響はあるだろうが、果たしてこれが税の問題だけなのかどうか。
可能性を挙げれば、マーケットの飽和も考えられるし、昨今の価格の高騰に対してユーザーがノーを突きつけている可能性もある。まだ、その原因ははっきりと見えてこないが、少なくとも数字にはそれが表れて始めているのだ。後に振り返ったとき、この2015年の販売腰折れが軽自動車の大きなターニングポイントになる可能性は十分にある。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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