フジテレビの年末・総合格闘技イベントは本当に「大健闘」だったのか赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2016年01月14日 06時25分 公開
[臼北信行ITmedia]

視聴率が伸び悩んだ理由

 振り返ってみるとRIZINはマッチメイクに「?」が浮かぶ点が余りにも多く、結局最後まで消えなかった。しかも大会当日が迫っているにも関わらず対戦カードがなかなか決まらなかったり、対戦相手が急きょ変更になったりもした。これではまともな大会PRなどできるはずもなく、MMAに興味のない一般視聴者層の新規開拓などますますもって望めない。視聴率が伸び悩んだのも無理はないだろう。

 29日のメインイベントでは日本の新旧MMAエース対決が組まれ、青木真也が桜庭和志にほとんど何もさせずに相手陣営からのタオル投入によって1RTKO勝利。かつてPRIDE時代に「グレイシー・ハンター」として名を馳せたレジェンドファイターの桜庭だが、さすがに4年ぶりとなるMMA復帰戦に臨むのは無理があり過ぎた感は否めない。

 しかも普段は70キロの青木と85キロの桜庭が対戦することで当日の試合は78キロの契約体重で行われたが、10キロ以上の体重差がある両者の対決は通常ならば「まずあり得ないカード」だ。8キロも増量しなければならないとはいえ、青木はまだ32歳。46歳の桜庭が7キロもの減量を強いられた末に真剣勝負に挑むのは、いくら「客寄せ」をしなければならなかったとしても危険極まりない。“フルボッコ”にされた挙句、最後にリング上で青木に意味深な苦笑いを浮かべながら「これも仕事だよ……」と語りかけた桜庭の姿は余りにも切なく痛々しかった。

 大みそかはセミファイナルで「ロシアの皇帝」の異名を取るエミリヤーエンコ・ヒョードルが3年半ぶりの復帰戦に臨み、インド生まれ日本育ちのシング・心・ジャディブと対戦。グラウンドでマウントポジションを奪うと右パンチを連打させ、1R3分03秒、レフェリーストップによる豪快なTKO勝利でカムバックを果たした。しかしヒョードルの復帰戦は早々と組まれていたものの対戦相手は一向に決まらず、シングと正式に発表されたのは何と大会まで2週間を切った12月18日だった。

 同じく大みそかの大会では大相撲の元大関把瑠都のバルトがMMAデビュー。元K-1王者のピーター・アーツを3-0の判定で下した。だが、このカードも実現前から難航の連続だった。把瑠都のデビュー戦の相手として当初決まっていたのは、元K-1ファイターのジェロム・レ・バンナ。しかも発表されたのは、大会20日前の12月11日のことだった。ところがバンナ陣営から12月20日過ぎに出場辞退の申し入れがあり、その代役を急きょアーツが買って出てバルトとの対戦が大会2日前の29日に発表されたのである。RIZINの運営スタッフはアーツに一生頭が上がらないだろう。

 その他にも突っ込みどころはある。RIZINの大会MVPに選ばれたのは、大みそかにヒクソン・グレイシーの息子クロン・グレイシー(ブラジル)と対戦した山本“KID”徳郁の甥っ子・山本アーセンだった。MMAデビュー戦とは思えぬ素晴らしい動きを見せたが、最後はクロンの三角締めでタップ。「日本のMMAの宝になるかもしれない」(榊原実行委員長)という言葉にはうなづけるが、敗者が大会MVPになるスポーツイベントなど聞いたことがない。

RIZINの視聴率は7.3%だった……

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