ウェアラブル端末が「街角」より「工場」で普及する理由(3/3 ページ)

» 2016年01月15日 08時00分 公開
[片山修ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

B2B領域での普及が期待されるウェアラブル端末市場

photo (出典:ブラザー工業公式webサイト)

 ウェアラブル端末による作業手順の表示や生体情報の取得は、生産現場、建設現場に止まらず、医療現場や物流拠点、保守点検作業などにも応用され、発展しつつある。

 このほか、ウェアラブル端末によって取得した生体情報を生かして、健康ソリューションを提供する取り組みも進んでいる。タニタが企業や自治体に提供する「タニタ健康プログラム」がそれだ。

 同社は、50年代からヘルスメーターや歩数計、体脂肪計、体組成計などの計量計測機器を開発してきた。考えてみれば、歩数計は、いわば「元祖ウェアラブル端末」だ。その歩数計や活動量計、体組成計に通信機能を搭載すれば、データを容易に蓄積、分析することができる。

 「タニタ健康プログラム」では、個人の活動量と体組成、血圧などの情報を専用サーバに蓄積し、身体の状態を「見える化」している。そのデータは、個人が自分自身で確認できるほか、スタッフが活用し、個々人に合った健康指導を行う仕組みだ。

 また、14年11月には新潟県長岡市において「タニタ健康プログラム」をベースとした、「ウェルネス・アクティビティー」の提供を開始。「ながおかタニタ健康くらぶ」の会員に活動量計を配布し、歩数に応じてポイントが貯まる仕組みを構築している。

 このように「ウェアラブル端末」は、技術やファッションの最先端をいくシリコンバレーや渋谷の街角よりも、地味でありふれた生産や建設の現場、自治体などで、本格的な普及期に入っているのだ。

 B2B市場におけるウェアラブル端末の広がりを受けて、ソニー、パナソニック、富士通、東芝、京セラなど日本の電機メーカーは、この市場に続々と参入しはじめた。グーグルもまた、業務用のGoogle Glassで復活を狙っているといわれている。

 B2C市場向けと比較して、B2B市場向けのウェアラブル端末は、コスト削減や生産性向上、安全の確保など、あくまで「実利」が求められる。すなわち、作業手順の表示、生体情報収集など、目的や用途は明確だ。それ故に、「市民権」を獲得しやすいといえる。ウェアラブル端末市場は、B2B市場を中心に急速に拡大していくことは間違いないだろう。

片山修の著者プロフィール:

 愛知県名古屋市生まれ。地方新聞記者を経て、フリージャーナリストに。

 2001年から2011年まで10年間、学習院女子大学客員教授を務める。著書に「ソニーの法則」(小学館文庫)20万部、「トヨタの方式」(同)8万部のベストセラーなどがある。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.