真っすぐな“子ども心”を失った大人になっていませんか?新連載・内田恭子の「いつもそばに本があった」(3/3 ページ)

» 2016年01月29日 14時40分 公開
[内田恭子ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

子ども心を忘れていない大人たち

小さなころからずっと本が大好き。これまた愛してやまないチョコレートを添えての読書は至福の時 小さなころからずっと本が大好き。これまた愛してやまないチョコレートを添えての読書は至福の時

 この本のもう1つの魅力はやはり登場人物。普通こういった物語に出てくる大人は、現実の世界と同じように、子どもの心を忘れてしまった人が多いのだけれど、ここに登場する大人は皆その大切な心を忘れてはいない。ヒコの目から見た大人は、私たちが子どものころに感じていた「ものの善悪をよく知っているきちんとした大人」として描かれているけれど、彼らの言葉の端々には優しさと本当に大事なことを忘れない大きな心が感じられる。

 迷子になってしまったヒメが親に怒られないように思わず嘘(うそ)をついてしまったヒコに対してお父さんが言った言葉。「嘘じゃないだろう。ヒコのは男の優しさだ」。ヒコの気持ちをよく分かっていなければ決して出てこない言葉であるはずだ。その後、大人になったヒコが「ぼくたちは、大人から受けた愛情を、子どもたちはと返して、この優しい輪を、いついつまでも、伝えていかなくてはならないのだ」というシーンでは、思わずその言葉を何度もつぶやいてしまったほど。

 自分はこういった大人になれているのだろうか? 皆さんはどうでしょうか? 深く考えさせられる一冊でした。

 ちなみに、この「誰もがしっている小さな国」は、佐藤さとるさんの名作「コロボックル物語」を受け継いだ有川さんが描いたもの。恥ずかしながらそれを知らずにコロボックルワールドに入り込んでしまった私。でも、これからまだ読めるたくさんのコロボックル物語があることに、静かに興奮している。

 きっと皆さんも仕事やプライベートで“大人”としての振る舞いを求められることは多いはず。もちろんそれは大切な役割だけど、一方で、子どものように純粋な気持ちで物事にぶつかっていくことも忘れてはいけないと思う。

 ぜひこの物語を読んで童心を思い出して、今までとは違った視点でこの一年のスタートダッシュを切ってみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

内田恭子(うちだ きょうこ)

キャスター。1976年6月9日、ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。神奈川県横浜市出身。1999年、フジテレビ入社。同局のアナウンサーとしてさまざまな番組を担当後、2006年に退社・結婚。


現在はテレビ・ラジオ・雑誌連載・執筆活動などをベースに、読み聞かせグループVOiCEを立ち上げ都内の小児病棟などで読み聞かせを行い、また「女性のHappyは世界を変える」をテーマにLena’sを主宰し日々活動を行っている。公式ブログ「Dear Diary,」

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.