「大好評」という言葉が示すように、これらがヘビーローテションされている背景には、とにもかくにも「数字」をもっているということが大きい。
「老後破産」は、「無縁社会」などのワーディングに長けているNHKスペシャルが2014年9月に生み出した。貧しさのなかで「もう死にたい」とこぼす高齢者たちに密着した番組は視聴者に大反響を呼び、シリーズ化された。昨年7月には『老後破産:長寿という悪夢』(新潮社)も出版し、現在まで13刷の大ヒットとなっている。
一方「下流老人」は昨年6月に出版された20万部超のベストセラーになった藤田孝典氏の『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)からきており、流行語大賞にも選ばれている。
過去最高の落ち込みだという出版業界で、ここまで「売る力」をみせつければ他メディアはもちろん、シニアマーケットを狙う者たちが放っておくわけがない。信託銀行やら投資関連企業は、「老後破産を防ごう」「老後破産対策」をうたう資産運用セミナーを企画するなど、なかなかの活況ぶりなっている。
ただ、そのような一部の不安訴求型ビジネスには喜ばしいことだが、「消費マインド」という点で見るとかなり問題が多い。病気や家庭の崩壊をきっかけに、「下流」に転落した高齢者たちをこれでもかと取り上げて、「他人事ではありません、みなさんも明日は我が身ですよ」と脅せば、高齢者はもちろん、その子供世代である40〜50代も消費をできるかぎり抑え、カネを抱え込むしかないからだ。
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