観光列車の増殖と衰退――鉄道業界に何が起きているか?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2016年02月05日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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 観光列車か否か、境界線上の列車もあるだろう。南海電鉄の特急ラピート「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」号は、本来は空港連絡特急だ。しかし、内外装に凝っていて、この列車そのものを観光目的とする映画ファンがいるはずだ。つまり、空港連絡特急だけど、空港には行かない人々は観光目的であり、観光列車と考えても良さそうだ。

 もちろんこれは私見だから、もっとさまざまな議論や解釈があって良い。観光列車というビジネスを知る「たたき台」になればよい。ただし、「風景や車内での特別な食事、特別なショッピングなど、一般的な観光需要を満たし、定められた区間を専用車両で運行する列車」という定義だけをもって観光列車を理解したつもりになってはいけない。

 例えば、ななつ星 in 九州、トランスイート四季島、トワイライトエクスプレス瑞風は同じ顧客層を対象としていると思われる。しかし、伊予灘ものがたり、「しまんトロッコ」「指宿のたまて箱」は異なる顧客層である。観光列車はそれぞれ異なる市場を相手にしており、営業戦略も違う。その分類については次回以降に論じるとしよう。

2017年の大型観光列車案件1 「トワイライトエクスプレス瑞風」(公式サイト) 2017年の大型観光列車案件1 「トワイライトエクスプレス瑞風」(公式サイト
2017年の大型観光列車案件2 「トランスイート四季島」(公式サイト) 2017年の大型観光列車案件2 「トランスイート四季島」(公式サイト

 1つヒントを提供すると、「不動産付加価値ビジネスと似ている」のだ。観光列車の隆盛によって、鉄道業界は運輸業の枠を超え、レジャー産業に片足を突っ込んだ。そこでは今までの鉄道業界のやり方では通用しない。このヒントから観光列車の市場を読み解いてほしい。

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