トップの人が実践している「4つのキーワード」銀座で学んだこと(4/4 ページ)

» 2016年02月09日 08時00分 公開
[桃谷優希ITmedia]
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社員は宝

 最後は「組織の内外」について。建築会社の社長Dさんは、社員が会社の目標を達成するために忠誠的に動いていると、個々の尊重が薄れ、自分に向いていない仕事のやり方になる危険性があると指摘します。

 「会社というのは、継続的に利益が出ていればそれでいい。細かいことばかり言っていると日常の業務に追われて、仕事は受動的になり勢いがなくなる。それは、左利きの人に右利きになれと言っているようなもの。そういう仕事の仕方は駄目だね。

 例えば、銀座のクラブならママがプレイヤーとなって、女の子たちそれぞれに適した仕事を任せているだろう? いかに生産性をあげ、会社の利益につながるかを考えるのと同様、どれだけ規模が大きくなろうとトップは常に大きな目標を達成するよう社員に動いてもらわないといけない。会社にとって社員は宝。だからトップの人間は、その大事な宝を路頭に迷わせないようにしないとね」

 Dさんは、社員1人1人を尊重しつつもトップが掲げた理念を理解して働いてもらうことが重要なのだとおっしゃいました。「人件費は最大の負債」とならないよう、経営者は日々内外の動きを敏感に察知し、思考をこらしているのです。


 せんえつながら私も経営者の端くれ。私のクラブにも、店舗の「理念」があります。「クラブの人間は『チームワーク』が大事だ」とよく言われますが、これはトップの人たちがいう、先の「4つのキーワード」に当てはまります。

 私のお店には容姿がいい子や愛嬌(あいきょう)のある子、お酒は強いがトークはイマイチな子などがいて、それぞれに得手不得手があります。テーブルに女の子たちを配置するときも、彼女たちの特性を見極めて、お互いに弱点をカバーして問題を表面化させないようにしています。

 例えば、たくさんのお酒を飲まれるお客さまがいらっしゃったとします。常日頃、私は「ホステスは必ずしもアルコールを飲むのが仕事ではない」と彼女たちに言っていますが、お酒が強い子を除く全員が下戸だとしたらどうでしょうか?

 そういう場合、お酒に強い子は「お酒を飲むのが自分の仕事」と即座に認識します。しかし、私がここで「『1人ばかりに飲ませてはいけない』といつも言っているでしょう」と言うと、彼女はお酒を飲む量が減り、飲めない子たちは無理して飲もうとするので場の雰囲気は悪くなるばかり。

 クラブにはいろんなタイプの女の子がいます。女性として魅力的であるとか、三枚目のお笑い担当だとか、自分のペースに付き合って飲んでくれるとか。お客さまが楽しい時間を過ごしてくれるために、クラブのママは彼女たちの適性を考慮して配置しなければいけないのです。

桃谷優希氏のプロフィール:

 1988年10月16日大阪府生まれ。16歳のときに処女作『デリンタ(悪魔の子)と呼ばれた天使たち』(文芸社)でデビュー。このほか『国民の声』(文藝書房)に寄稿、『罪追人』(文藝書房)がある。

 京都ノートルダム女子大学卒業後、北新地のクラブへ。その後、銀座に移籍。銀座40周年の老舗「クラブセントポーリア」でナンバーワンの座を手にして、その後26歳の誕生日に某有名店のママに就任。2015年12月、銀座7丁目にクラブ「城」をオープン。


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