フェイスブックの「無料サービス」は、本当に“中立性”を侵すのか世界を読み解くニュース・サロン(1/6 ページ)

» 2016年02月18日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

世界を読み解くニュース・サロン:

 今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。

 欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。


 英BBC放送で最近、米大手SNSのフェイスブックについて、こんなニュースが放送されていた。

 記者の調査取材で、フェイスブックに数々の「児童ポルノ」コミュニティが存在していることが分かったという。記者によれば、そうしたコミュニティは会員のみが閲覧できて、不適切な写真が多数掲載されているそうだ。BBCは、フェイスブックがそうした犯罪行為に対して十分な対策を行っていないと指摘していた。

 このケースについて全面的にフェイスブックを非難するのはかわいそうな気がする。人々が便利にコミュニケーションを取れるSNSのプラットフォームを提供していることで、犯罪行為に悪用されたのである。フェイスブックにしてみればいい迷惑だろうが、月に10億人以上が利用する世界的なサービスとなった現在、社会的責任も十分に認識する必要があるということだろう。

 実は今、この児童ポルノ以外にも、フェイスブックの提供するサービスが反感を買っているケースがある。「フリー・ベーシックス」と呼ばれるサービスだ。

フェイスブックの提供するサービス「フリー・ベーシックス」が反感を買っている(出典:フェイスブック)

 フリー・ベーシックスとは、途上国でインターネットにアクセスできない人たちに対して無料でネット接続を提供するというもの。素晴らしい取り組みのように感じるが、実は問題をはらんでおり、2016年2月8日にインドが国内でサービスを禁止すると発表。インドのフェイスブック社長が辞任し、フリー・ベーシックスはインドからの撤退を余儀なくされている。

 一体どんな物議になっているのか。インドを主戦場として盛り上がっているこの話題の背景には「ネット・ニュートラリティ(ネット中立性)」の問題がある。そして議論を見ていくと、今回のインド当局による決定には違和感を覚える。

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