ボルボの新型XC90は「煮詰まるまで待て」池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

» 2016年02月22日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

サスペンションのコンパクト化の代償

アッパーアームハイマウント型のダブルウィッシュボーンフロントサスペンション。最重量モデルでは2.3トンの重量級だけにフロントの余力は大きく取ってある アッパーアームハイマウント型のダブルウィッシュボーンフロントサスペンション。最重量モデルでは2.3トンの重量級だけにフロントの余力は大きく取ってある

 さらに前述の「ドライブモード」の切り替えではエアサスペンションの空気圧を変えることで車高が変化する。デフォルトと比較して「エコ」でマイナス10から20ミリ、「ダイナミック」では20ミリ車高が下がる。ダイナミックにしたとき、最も直進安定性が落ちたことからもこのキャンバー変化によるネガが原因だと思われるのだ。

 なぜそんなことになったかと言えば、サスペンションのコンパクト化の代償だ。エアサスペンションでないモデルでは、省スペース化のためにコイルスプリングではなくカーボンファイバー複合素材を使った横置きリーフスプリングを採用している点からみても、コンパクト化はリヤサスペンションに課せられた使命だったのだろう。

今回の試乗車は全車エアサスペンションを装備していたが、通常モデルでは省スペースのためカーボンファイバーの横置きリーフスプリングを採用。緑色のパーツがバネだ 今回の試乗車は全車エアサスペンションを装備していたが、通常モデルでは省スペースのためカーボンファイバーの横置きリーフスプリングを採用。緑色のパーツがバネだ

 そこまでしてリヤサスをコンパクトにまとめた結果、得たものが3列目のシートの高い安全性であり、またプラグインハイブリッドモデルのモーターユニットのリヤ配置である。リヤサスペンションの設計はそれらのために制限を受けていることになる。

 さらにこの状況を加速させているのが、ハイグリップタイヤの採用だ。試乗したT6 AWD Inscription(インスクリプション) ではコンチネンタル・スポーツコンタクトの275/45R20という巨大なもので、グレードがR-Designになると275/35R22にエスカレートする。基準モデルたるT5 AWDですら235/55R19というサイズである。もう少し穏やかな銘柄のタイヤを履くか、サイズを少し落とせば、キャンバー変化の影響は減るはずである。

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