スターバックスに異変? 「居心地のよさ」追求のジレンマすごい差別化戦略(4/4 ページ)

» 2016年02月27日 06時00分 公開
[大崎孝徳ITmedia]
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 アメリカのシアトルにあるスタバ本社でスタッフにインタビューしたことがあるのですが、彼はスタバの強みに関して、コーヒー以上に「インテリア」「空間づくり」を強調していました。こうした強みである「居心地のよさ」により、長居する客が増加して回転率が低下するというのは、なんとも皮肉な話です。

 シアトルでスタバをはじめとしてカフェを数多く回りましたが、日本とは違ってテイクアウトする客の多いことが強く印象に残っています。このようにテイクアウトの客が多ければ、仮に客席の回転率が悪くとも、店全体の売り上げはある程度の数字が残せるでしょう。また、長居する客の割合や時間が日本ほどはひどくないとも感じました。

 こうした顧客の行動の相違は各国の文化や国民性、習慣に依存する部分も多く、1つの企業の力によってコントロールすることはなかなか難しいように思います。スタバのサードプレースというコンセプトは、アメリカでは比較的容易に実現できても、日本においてはスタバ人気が高まれば高まるほど、深刻な課題となってくるのかもしれません。

 日本企業が海外進出する際に、進出先の国の文化や慣習などにより、日本で成功した差別化要因が通用しないケースは往々にして見受けられます。国際マーケティングの研究では「標準化(効率を重視して本国と同様の策を実施)と適応化(顧客ニーズの相違への対応を重視して当該市場に合わせた策を実施)をいかに調整すべきか?」ということがしばしば議論の対象となりますが、今回のスタバの事例もこうした問題の難しさを表しているといえるでしょう。

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