うどんチェーン、カフェ事業への多角化戦略の盲点すごい差別化戦略(1/5 ページ)

» 2016年02月29日 06時00分 公開
[大崎孝徳日本実業出版社]

集中連載:すごい差別化戦略 について

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この連載は大崎孝徳著、書籍『すごい差別化戦略 競合他社を圧倒する「違い」のつくり方』(日本実業出版社)から一部抜粋、再編集したものです。

 価格競争に陥らないために、いま何をすべきか?
 あの会社は、なぜ競合他社に模倣されないのか?
 セオリーどおりでは、なぜ差別化できないのか?
 競合他社を圧倒する“違い”を「どこで」「いかに」つくるのか?

模倣されない意外な理由とは!? 25の身近な事例を題材に、価格競争に陥らない、常識を突き抜けた「差別化戦略」の核心を解き明かす1冊です。


 セントラルキッチン方式(特定の施設で集中調理して各店舗へ配送する方式)をあえて排除し、「できたて」本物のうどんを低価格で提供するという差別化戦略のもと、急成長してきた大手うどんチェーンCが、新たにカフェ事業に着手しています。2015年11月現在、高松の一号店を含め6店舗ですが、今後、順次全国に展開を予定しているとのことです。

大手うどんチェーンの多角化戦略

 この事例では、うどん店を本業とする企業の多角化戦略について考えていきたいと思います。

 事業の多角化の代表的な事例と言えば、ミシンメーカーであった豊田自動織機の自動車事業(のちのトヨタ自動車)、花札やトランプのメーカーであった任天堂のゲーム事業など、数多く思い浮かびます。事業を多角化するメリットとしては、経営資源の有効活用、変わりゆく環境への対応などが挙げられます。

 ミシンと自動車はもちろん異なる商品ですが、工業製品という共通点があり、ミシンの製造に関わる多くのノウハウが自動車の製造にも生かされています。また、トランプとゲーム機もまったく異なる商品ですが、おもちゃを扱う企業風土、玩具店への流通網などは有効に活用できたはずです。変わりゆく環境への対応に関しても、ミシンやトランプに固執したままであったならば、現在のトヨタや任天堂が存在しないことは明白です。

 こうしたセオリーを参考にすると、うどんとコーヒーでは商品は異なるものの、飲食店のノウハウは有効に活用することができます。また、うどん事業において、将来、強敵が現れるかもしれませんし、うどんという食文化自体が廃れる(万が一ですが)などのリスク回避の面からも、カフェ事業への進出は正しいように思えます。

(写真と本文は関係ありません)
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