実は、“神対応”と呼ばれるその行為が「神でもなんでもない」可能性もある。偏った見方かもしれないが、全額返金のエピソードの裏には、ひょっとしたら「カネを返せば文句はないだろう」「タダにするんだし」という考えが店側にあったのではないだろうか。
もし、筆者が同じような状況にあったなら、デザート分の返金しか受けない。もしくは、次回の利用時にそのデザートをいただく。故意ではないにしろ、全額返金を受けるということは、店の失敗全てが「なかったコト」なってしまうからだ。すると、その店は同じ間違いを繰り返すことになる。これは、筆者が長年にわたる接客業の経験に基づく答えだ。
「カネを返したらお客は納得してくれた。だから、失敗はなかったコトに……」。おそらく店側はそう思っていることだろう。ソフトクリームの例も、「店の前でギャアギャア騒ぐなよ。ほれ、新しいソフトクリームやるから」――実際はそんな理由から派生したのかもしれない。
自分でもかなりひねくれた考え方だと思うが、正直なところ、サービス提供側の立場でこういう考えを持ったことがないかと問われれば、残念ながら「ない」とは言いきれない。
「おいおい、なんかガッカリだなぁ」。そんな声が聞こえてきそうだ。
最後に、筆者が考える“本当の神対応”とはどういうものかを伝えておきたい。このポイントを押さえていれば、打算もなく経営者側も推奨する神対応と言えるだろう。
それは、どんな対応であれ、結果として店が利益を得ているかどうかだ。利益の中で行われたのならば、店は損をしないし、お客さんも喜んでくれる。Win-Winの神対応だ。
お客さんもそれを踏まえた上で「商売上手だねぇ」と、笑いながら言ってくれるなら、こちらも喜んで一芝居うたせてもらおうではないか。
たぬきときつねの化かし合いではないが、そんなやりとりの中に本当の神対応は潜んでいるのかもしれない。
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
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