「小さな大企業」を作り上げた町工場のスゴい人たち

安売りをしない「大人ランドセル」が、海外セレブを虜にする理由スピン経済の歩き方(2/7 ページ)

» 2016年03月08日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

価格は高いのに、発売後すぐに完売

 そんな長い歴史を誇る日本のランドセルの中でも、一級の素材と一流の職人技を用いる「大峽のランドセル」は確固たる地位を確立している。5万〜15万円という高価格帯にもかかわらず毎年発売後はすぐに売り切れとなる。もちろん、ランドセルだけではない。ビジネスバッグや財布も有名百貨店で「高級鞄」として人気を集めているのだ。

 そんな大峽製鞄が、海外へ目を向けたのはおよそ5年前。同社のブランディングを担当している大峽宏造専務によると、それ以前もパンクファッションが流行した十数年以上前、ロンドンのファッション関係者に請われて輸出したこともあったが、本格的な進出をしてみようと考えたのはこの時期が最初だという。きっかけは、欧州と遠く離れた「ブラジル」の地だった。

ミラノの有名デーパート「La Rinascente S.p.a.」でも扱われる「大峽のランドセル」(出典:大峽製鞄)

 「親しい人から、サンパウロで靴や鞄の国際展示会があるので出てくれないかと頼まれて出展しました。ラテンの国なので毎日なにかしらパーティーやレセプションがあって、いろいろな国のバイヤーたちと直接話す機会があった。そこでほとんど全員が口をそろえ、『こんなところに来ているのはもったいない、ピッティウォモに出ろ』と言うのです」

 ピッティウォモとは、イタリアのフィレンツェで年2回行われるメンズファッションのトレードフェア「PITTI IMAGINE UOMO」。世界中のファッション関係者が一堂に会する、いわば“メンズファッションのワールドカップ”のようなものだ。

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