北陸新幹線延伸ルートは「JR西日本案」が正解:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)
北陸新幹線の敦賀〜大阪間ルートについては報道が交錯している。速達性の面からJR西日本案が有力という見方もあれば、従来の小浜ルートで経由地と見込まれた亀岡市はJR西日本案に反対し、舞鶴案に傾倒する。京都府も舞鶴ルートに賛成の様子。関西広域連合は米原案に消極的となりつつあり、関空接続に関心を示しているようだ。
こうした動きに対して、報道メディアの多くは「我田引鉄」と揶揄(やゆ)しつつ、「混沌としている」「動向が注目される」「適切な判断を期待」という結びばかりだ。「このルートにすべき」という明確な論考の少なさが嘆かわしい。決定権は政府与党のプロジェクトチームにあるとしても、かつて井上勝が参考にしたような、地縁に関係ない意見を挙げる必要がある。
杉山私案。北陸新幹線はJR西日本案の新小浜ルートとし、北陸新幹線プロジェクト委員長案は山陰新幹線に組み込む。山陰地域は米子空港のソウル便以外に国際線が就航しておらず、関西国際空港と直結する意味は大きい
ブログなどで多くの人が発信できる現在、識者から有益な意見を採り上げる役割こそメディアの使命である。この国にとって北陸新幹線はどうあるべきか。そうした見地から、明確に「これがいい」という意見をもっと挙げるべきだ。私は1973年の新幹線整備計画を尊重しつつ、JR西日本案が最適と考える。もし異なるルートで決着したとしても、「その後の後悔の火種として燻り続けてやる」という覚悟を持って本稿を記す。
イチ鉄道ファンとしては「どれでも良いから早く作ってよ」ですけどね。
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