中古車買い取りビジネスの仕組み池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2016年03月14日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 また、現在では買い取り業者がクルマを仕上げる工場を持っているケースも増えてきた。細かい擦り傷を板金したり、多少の不具合を修理したり、車内外を徹底的にクリーニングするなどの作業で付加価値を上げる。査定側が見るポイントがよく分かっているので、効率の良い加修ができるわけだ。

オークションが終了したクルマが集められた駐車場 オークションが終了したクルマが集められた駐車場

 ビジネスとしての仕組みはそういうことになっている。ユーザーとしてはより高額査定してもらった方がいいわけだから、買い取り業者を使うメリットは大きい。しかしながら、中古車の下取りというのは多くの場合、新車購入に付随して発生する。

 ユーザーの中には「買い取り業者に下取りに出すのは、新車ディーラーにとって不愉快なのではないか?」と考える人もいるだろう。しかしながら、これも一概にそうとは言えない。現場で新車を売るディーラーの営業担当にとっては、顧客の下取り査定が上がれば新車の購入資金が増える。結果的にグレードを上げてくれたり、オプションを余分に購入してもらったりというメリットがあるのだ。

 この辺りがビジネスとしての難しいところで、新車販売ディーラーの経営者側から見れば、中古車という商材をみすみす外部に取られるということになり、自社での買い取りを強化したい側面もある。しかしながら、自社の営業担当者に対する評価は今でも販売台数カウントが主流で、下取り車の再販売利益も含めた営業利益による給与査定にはなっていない。評価システムがないところで頑張る理由が現場にないのは当然だ。

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