アメリカの研究機関が、家電を兵器に変えるアイデアを募集するワケ世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2016年03月17日 08時10分 公開
[山田敏弘ITmedia]

米国の「防衛」に生かしたい

 米IT系Webサイト『Ars Technica』は、Improvについて、「掃除機を簡易兵器に作り変えられるなら、DARPAはあなたの力が必要かもしれない」と報じている。英IT系Webサイト『The Register』は、「これは、米国のために食パンのトースターを兵器化せよ! というDARPAからオタクに対するメッセージだ。『Improv』プロジェクトは、愛国的な行為として、IoT(モノのインターネット)をハッキングしろということだ」と報じ、また米ポピュラーサイエンス誌は「新しいDARPAのプログラムは、あなたにホバーボードや、スターウォーズのドロイドBB-8を兵器にしてほしいらしい」と書いている。

 単純にインターネット上でハッキングを行い、コンピュータを兵器化するというアイデアもその基本的な例と言えるだろう。さらに2013年4月に米マサチューセッツ州で起こったボストンマラソン・爆破テロ事件では、釘や金属片が入った圧力鍋で爆弾が作られたが、それも一例ではある。

 だが、もっと驚くようなアイデアが求められているのは言うまでもない。事実、このプロジェクトの担当者であるジョン・メイン氏は、「DARPAの使命は戦略的な驚きをつくり出すことで、徹底して革新的で不可能とさえ思われるテクノロジーを追求することに主眼を置いている」と述べている。

 実はこのプロジェクト、単に米軍が電化製品を兵器に転用するためのアイデアを募集しているのではない。そのアイデアや技術を、米国の「防衛」に生かしたいということなのだ。リリースによれば、「輸送や建築、農業、そのほかの商業部門のために開発された一般に手に入る製品は、非常に複雑な部品が組み込まれている。賢い敵は、改造や製品をつなぎ合わせたりして、奇抜で思いがけない安全保障の脅威をつくり出すのだ」という。

 そこでアイデアを募集し、敵国によるどんな脅威が存在するのかを学ぼうとしている。基本的に小さなグループでさまざまな研究を行い、数限りないリスクの想定をすでにしているはずのDARPA自身も思いつかなかったような、また想像もつかなかったような幅広い分野からの視点で脅威を知りたいのだ。また受け身で敵からどんな攻撃が来るのかを待ちながら対策をするよりも、先に事前に問題を見つけて対策する「プロアクティブ」な防衛を行いたいとも主張している。

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