米国水族館の「シャチのショー廃止」を日本企業が注目すべき理由世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)

» 2016年03月24日 06時54分 公開
[山田敏弘ITmedia]

過小評価してはいけない存在に

 このような状況を生み出している動物愛護活動の背景には、強硬な団体がからんでいる。その代表格が、300万人の会員を誇る世界最大の動物愛護団体「People for the Ethical Treatment of Animals(PETA)」だ。この団体は、動物実験から動物園、食品や衣料品など、とにかく動物の“生き方”に反することはすべて反対し、時々ゲリラ的なデモ活動でも話題になる。また「Humane Society of the United States(HSUS)」という米国最大の団体も発言力がある。

 こうした団体は過激なほど徹底した抗議活動を行う。近年では、活動団体の発言力がインターネットとSNSの普及で強まっている。シーワールド批判キャンペーンでも、反シーワールドの署名活動や「苦痛のシーワールド」といったWebサイトが立ち上がったり、シーワールドの公式Twitterアカウントが事実上、動物愛護活動家に乗っ取られたり、前出のドキュメンタリーがうるさいほど大々的に喧伝(けんでん)されたりと、徹底した活動がインターネットで行われた。

(出典:苦痛のシーワールド)

 動物愛護団体の考え方はあまりに極端すぎると思えなくもないが、良い悪いは別にして、今となっては動物の扱いを考え直したほうがいいのかもしれないという意識を人々に植え付けていることは確かだろう。インターネットの時代には、もはや過激な動物愛護団体と過小評価してはいけない存在になっているのである。

 このような活動をサポートするようなトレンドも生まれている。「ビーガン」である。ビーガンとは厳格なベジタリアン(菜食主義者)で、動物関連食品を食べない人のことを指す。米国ではビーガンが増えており、ある統計では、米国民の5%がベジタリアンで、2.5%がビーガンだと言われている。

 最近では米国のスーパーなどでもビーガン専用の食品などを見かけるようになった。ファッションの一部のように見る人もいるが、彼らは動物愛護精神から、動物を食べないばかりか卵や牛乳など動物から生まれる食品も口にしないし、当然のことながらシーワールドや企業による“動物虐待”を口撃する。

 ビーガンのトレンドをけん引しているのはセレブたちである。女優のナタリー・ポートマン、ミシェル・ファイファー、アリシア・シルヴァーストーン、男優ではホアキン・フェニックスやウッディ・ハレルソン、歌手ではアッシャーやトム・ヨーク、その他ではマイク・タイソンやカール・ルイスなどもビーガンだと公表している。ちなみに現在、米民主党の大統領指名候補争いをするヒラリー・クリントン元国務長官の夫、ビル・クリントン元大統領もビーガンである。

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