「小さな大企業」を作り上げた町工場のスゴい人たち

10万円でも即日完売 大人が使うランドセルはどのようにして生まれたのか(4/4 ページ)

» 2016年03月25日 08時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]
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時代が変わっても「変わらないこと」の大切さとは

 これから先、事業を継続していくには新しいことへ挑戦し、常に変化していくことが必要――。そんな思いを込めて取り組んだOTONA RANDSELの開発だが、実際、この挑戦は「ビジネスシーンで使うランドセル」という新たな市場を切り開いた。

 しかし、その一方で、企業が生き残るためには「変わること」と同じくらい「変わらない」ことも重要だと説明する。

 例えば、その一つがこれまで説明してきた「高品質なランドセル」への“こだわり”だろう。創業以来変わらずにこだわり続けてきたからこそ「OTONA RANDSEL」という新商品を作り出せたわけだが、まさに「変わらない」ものが“強み”となった良い例である。

 他にも、同社はお客さんとの距離を変えないことも重視する。

 「私たちはランドセルの開発・製造・販売・修理までを全て自社で行います。そのため、スタッフや職人はお客様の生の意見を毎日聞くことができ、それを商品の改善に生かすことができます。これは自社の強みであり、これから先も変えていくことはないでしょう」(同)

 Webやアンケート用紙などの形式的な調査ではなく、対面でお客さんの声を聞くことで、アンケートでは拾うことができない細かい意見、要望を聞き出すことができる。また、お客さんとの距離が近いことで、つくり手が高いモチベーションを維持することにもつながっているこという。この距離感が、50年以上もランドセルを売り続けることができた大きな要因になっていると語る。

 同社は、今後も自社製品の直営販売を継続し、お客さんとの(対面ベースでの)接点を重視していくそうだ。

 「何を変えずに残すか」――。変化が激しいビジネスの世界で生き残るためには、変わっていくことと同じくらいに「変わらずに残していくもの」をしっかり見極めることが重要なのだ。まずは、その軸をしっかり持つこと。東京下町の町工場から、そのようなことを教わった。

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