台湾大地震から17年、「エコビレッジ」として復興した桃米社区の取り組み事例に学ぶ、地方創生最前線(1/3 ページ)

» 2016年03月25日 07時50分 公開
[石川孔明ITmedia]

 台湾大地震から、今年で17年目。震源地付近の桃米社区(とうましゃく、社区:台湾における地域コミュニティの単位)は、台湾でも有数の「エコビレッジ」として復興し、台湾の地方創生に大きな影響を与えている。

地域の復興のために

 1999年9月21日、台湾中部で発生した大地震は10万棟以上の建物を全半壊させ、2415人の命を奪う大災害となった。特に被害が大きかった台湾中央部の山村では、以前からの課題であった産業の空洞化にともなう人口流出がさらに加速し、美しい里山の復活はほぼ不可能であると思われた。震源地に近い埔里鎮(ほりちん、鎮:台湾の行政単位で町に相当)の桃米社区(人口約1100人)では死者こそゼロであったが、半数以上の家屋が全半壊した。

 そこで地域の復興のために立ち上がったのが廖嘉展(りょうかてん)だ。1962年、埔里鎮に生まれた彼は著名な雑誌でジャーナリストとしてのキャリアを積んだ後、1999年1月に埔里鎮で地域振興に取り組む財団「新故郷文教基金会」を立ち上げた。余談だが、廖氏の世代には社会運動に熱心な市民が多く、台湾民主化後、そういった人々の多くが地域振興や環境保護を目的にNPOを始めたそうだ。財団設立から1年も立たないうちに台湾大地震が起こり、埔里鎮に住んでいた彼自身も被災した。

桃米エコビレッジにて廖嘉展さん。肌寒く小雨が降る中の訪問であったが、村内を散歩する観光客が多く見られた
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