こうしたセダンスタイルの場合、床下の整流だけでは十分に流速差を付けることができないため、高運動性モデルにはウイングが必要になる。シビックType-Rの場合、かなりリヤウインドーラインを引き上げているので、流速のコントロールは十分できているはずだが、それ以上に高いレベルでの接地荷重が必要になった結果、ウイングを採用しているのだと思われる。
余談だが、この後ろ上がりのサイドウインドー見切り線にはメリットだけでなくデメリットもある。駐車のとき、クルマが真っすぐかどうかを見極めるにはこの窓のラインが大きな目安になる。水平でないとどうしても斜めになりがちになる。歴代プリウスがオートパーキングに熱心な理由の1つはこの見切り線のせいだ。クルマの設計はこうして風が吹けば桶屋が儲かるように、1つの要素がほかの要素に影響を与えていくところが面白い。何と何をどう優先するのかをきちんと序列立てないと整合しないのだ。
さて、最後にウイングの意義について整理し直そう。低速と高速のハンドリングを両立するために前後の荷重バランスを整えるためにウイングが必要になった。近年では、低燃費性能のためにボディ下面の整流による手法が採られるようになったが、さまざまな理由でそれだけでは十分でない場合があり、不足部分を補う意味でまだウイングは必要とされているのだ。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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