なぜ「大人のぬり絵」が世界中で売れているのか来週話題になるハナシ(2/4 ページ)

» 2016年03月29日 08時00分 公開
[藤井薫ITmedia]

「大人のぬり絵」がヒットしている理由

 なぜこんなに「大人のぬり絵」がヒットしているのか? その理由のひとつに「大人のぬり絵」がストレスを軽減させる効果があると、注目されていることが挙げられる。

 専門家によると、人間のストレスに関係しているのが、右脳と左脳のバランスだ。ストレスの多い現代社会では、左脳を使うことが多く、どうしても左右の脳をバランスよく保つことが難しい。そのため、ストレスを軽減するには、知覚や感性をつかさどる右脳を使うことが効果的だと言われている。

 フランスの例を見ると分かりやすかもしれない。フランスでは他国に先駆けて、「大人のぬり絵」ブームが到来し、世界で最初に『Secret Garden』の売り上げが100万部を超えている。

 なぜフランスなのかと疑問に思うかもしれないが、実のところ、これはストレスと大きく関係している。2011年にWHO(世界保健機関)が17カ国を対象に行った調査で、フランスは世界で最も鬱(うつ)になりやすい国民だという統計結果が出ている。過去には、職場でのストレスから自殺者が多数出たことを受け、政府がストレス予防策を企業に求める事態に発展するほど、フランスではストレスが大変な社会問題になっている。

 そこでストレスを軽減する方法として「大人のぬり絵」が大変なブームになったのだ。「大人のぬり絵」を体験した人たちからは、色を塗っている間は作業に集中でき、ストレスや悩みから解放されるとすこぶる好評だという。また、無心に色を塗っていく作業は、まさに「禅」のようですらあると絶賛されている。

 デジタル全盛の時代に、紙に印刷されたモノクロの絵にひたすら色を塗る作業は究極のアナログだ。そのシンプルさがウケているというのは分からなくもない。しかし、ぬり絵と言っても、決して子供だましのようなモノではない。

 手書きで精密に描かれたジョハンナ・バスフォードの作品は、ラインが非常に複雑なため、色を塗っていくのに集中力が必要になる。また、色を塗り終えた作品は、非常に芸術性が高いものに仕上がるため、絵心がない人でもかなりの達成感が得られるという。そんなことから、多くの大人を虜にしているようだ。

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